ハイサイドの回避策 (新明解国語辞典) その2
YAMAHAはHONDAに比べ、トリガーに加重をより必要としているのではないでしょうか?
効率のよいトリガーは、肉体の硬直を伴う加重を、重心からより遠い位置におこなうことにより生まれます。
これは、ハイサイド対策の見地からすれば好まざる状況といえるでしょう。
余計な動きを誘発するような位置に起点を置いてしまうことで、よりハイサイドの確率が高くなると考えられるからです。
ターンイン時や旋回中においてステップ荷重に頼ることなくライディングできれば、その分ハイサイド回避のためにステップ加重をより有効活用することができるからです。
前回の回答でした。
ステップへの荷重は内足荷重ですか?外足荷重ですか?
よく問われる質問ですが、これは「聞いてどうするんだ?」的に役に立ちません。
もしも、積極的なライディングについての情報を知りたいのであれば、荷重だけではなく次の情報についても問うべきでしょう。
- 重心はどこか
- 荷重の分配はそれぞれどのくらいか
- 加重はどこにどのようにするか
- 起点はどこにするか
- ホールドはどこで行うか
重要なことは荷重ではなくて重心をどこにするかです。
そして、荷重をどのように振り分けるかです。
そして、さほど重要ではないが加重をどのように行うかです。
ライディングの技法として一般的によく使われる用語である「イン側ステップへの荷重」は、荷重ではなく加重のことで、せいぜい「ドアをノックする」程度の役しかしていません。
その後のバンキングだの何だののアクションは、ほっておいても重心と慣性と接地点とのズレとかによりしかるべく処理は進むからです。
その動作は、「一瞬加重して、後は単に受け持ちの荷重をかけるだけ」と呼ぶのが正しいでしょう。
そして、その、役割が終わっているはずの「イン側ステップへの荷重(内足荷重)」、「外足荷重」が、思いもよらずハイサイドに加担していることになるのです。
じゃあ、内足、外足への荷重は不要なのかというと、何もアクションをする予定のないときや、外乱による予定外の動きがなければ不要でしょう。

何も起きなければ何も問題ない
じゃあ、外乱があるときの荷重の量はどの程度が良いかというと、
それはサスペンションのプリロードと考えればよいでしょう。
プリロードは時間短縮と、余計なリアクションの抑制に貢献しています。
サスペンションと同様にサスペンション自体の動きが良くなったとしてもその反作用で全体が悪くなることもあります。
バランスを考える必要があります。
さて、ハイサイドしやすい条件とは何でしょうか?
一言で言うとグリップを取り戻した時のバイクの動きと、それに伴うライダーの動きが大きい時、あるいは急激な時としましょうか。
ライダーがコントロールや加担してしまう要素としては、重心と荷重が離れている場合、あるいは作用点がずれている場合に起きやすいと言えるでしょう。
このことを、例えばノリック乗りで考えてみましょう。
ノリック乗りでハイサイドになりにくいライディングの仕方を考えてみます(ただし、見た目がノリック乗りの場合です)。
まずライダーが振られた時の中心点を胸辺りにすることが出来ます。
バイクがスライドし、グリップを取り戻した時の挙動によるライダーの動きを、胸を中心に頭と腰が振られる感じにすることが出来ます。
それは収束した時のフォームがリーンウィズに近くなることを意味しています。
タイヤの地面との接地点とバイクの重心と、ライダーの重心との接線が一直線になるということです。
他の状態に比べればはるかに理想的といえるでしょう。
ステップ荷重について考えてみましょう。
グリップを回復した時に胸回りが動かされないようにするためには、外側の足(外足)と腰回りは硬直してはいけません。
外足を硬直させてしまったらそこを起点とした回転となりより”くの字”的に各重心の接線は一直線から遠のきます。
腰回りの硬直は上下運動を誘発してしまいます。
もしも硬直が必要なのであれば内側の足がよいでしょう。
グリップを回復した時の勢いを相殺できる可能性があるからです。
また作用点が、地面からの距離が短いというのも有利に働きます。
例えば、外足に加重している最中にそのスライド&グリップが起きたら、グリップした時のバイクの起き上がりにその足が更に加担し、より高く跳んでしまうことでしょう。
反対に内足の場合は、スライド&グリップの後の作用は起き上がりの抑制や、改めてのスライドや、あるいはその反動の作用方向が接地点であればサスペンションが沈み込む方向に働きます。
サスペンションの反動で結局転倒してしまうにしても、時間的な余裕を作ることに貢献することが出来ます。
腰回りの硬直はシートからの離脱や、ピッチング的な動きの反動を食らうことになります。
それらの、そこでのポイントは、その硬さです。
柔らかく吸収するか、硬直させて抵抗するかバイクと同化しするかで状況は一変します。
同じライディング中でもこれから加重するのか、加重中なのか、加重は終了しているのかでも一変します。
加重中は更にその所要時間でも大きく状況が変わります。
話はノリックに戻って、腕について。
腕は逆に内側の手でのバンキングやホールドを行なってしまうとハイサイド時には不利になります。
硬直系だと上半身が反動を食らうことになってしまいます。
オフロードやジムカーナみたいな外側の腕の肘を上げての抑えこみは、自由度が高く、また硬直させていたとしても致命的ではないでしょう。
どちらにしても抑えこむよりは、柔軟性をもたせたほうが安全そうです。
荷重の配分、というか重心を接地点とバイクの重心の接線よりは内側にオフセットするのは、グリップが復活した時に慣性がバイクに向かうためには必須です。
リーンウィズでは、グリップしたとたんにバイクと離れてしまう方向に慣性が働きます。
ただし、スライドする時点でライダーの重心は内側にオフセットされるので、スライドする量を見込んでのオフセットとなります。
この点に関しては、重心の高さは低いほうがより有利となります。
ノリックやシュワンツの転倒の前置詞に「派手」がつくのはこのためかもしれません。
そして荷重とは別レベルでホールドも必要です。
一般にホールドしろと言われると、ニーグリップとか、外側の足を思い浮かべますが、それだけではありません。
柔らかく伸び代のある腰や、内足もスライド時に離れること無く追随できればそれはホールドと同義です。
初期のノリック乗りのノリックのホールドはあまり伸び代のない腰だったのではないでしょうか。
あの独特なフォームはことハイサイド対策的には進められないかもしれません。
そして後期のノリックのホールドは内足っぽかったような(不明)。
ただし得るものよりも失うもののほうが多いこともあります。
自身の判断だけではなくトレーナーなどからの正しい見極めとアドバイスが有益でしょう。
ノリック乗りはこんな感じだとして、他のライダーについても分析してみます。
そして実際に試してみて、真偽を確認して経験値を深め、より精度を高めましょう。
改めて、ハイサイドのしにくいライディングをまとめますと次のとおりです。
重心と慣性と接地点と作用点について自身のライディングとその場その場での状況を分析しプロダクトとし、改めてライディング全体と、加重分配と加重のさじ加減をサブプロダクトとして、対策を複数用意し使い分けることです。
より精度を上げるためにはスライドが起きないように神に祈るより、意図してスライドさせるか、するつもりでの計画のほうがはるかにハイサイド対策としては高得点となるでしょう。
そしてタイヤと地面の接地点と、バイクの重心と、ライダーの重心との接線がなるべく一直線で、あるいは、ハイサイドへの対応中に一直線になるように。
そして余計な作用点をそのまま放置しておかないことです。
要するにシート荷重―が基本で、瞬間瞬間で解答の異なる適切な加重を計画に基づいて行う。
その加重のためには、やはり適切にプリロードされたステップ加重が必要である。
そして適切なホールドを行い、バイクとライダーの位置関係を正しくコントロールすることです。
それらがハイサイド対策であるということです。※
ただの基本の基だったりしますが……
以上
ハイサイドの回避策 (新明解国語辞典) その2 でした。
※
肝心の、
ライダーの心理状態が悪い意味での「ハイ」寄り(ハイサイド)の時には「ハイサイド対策」は効果が無いでしょう。
そのためには「ハイ寄りにならない対策」と「ハイ寄りの時の対策」が必要ですね。



















