コーナリング番長 その2
どこに向かっている?
そもそも今のブリジストンの、「トラクションをかけ続けなければいけないタイヤ」と言うのは、一体何を目指しているのでしょう。
いくらサーキット専用とはいえ、狭いレンジをキープできないとまともに走れないような特性は、少なくともそのままでは街乗りにフィードバックできないでしょう。
まさか、単純に四輪の流用?
トラクション必須、スライド必須
今やこのイットキもトラクションを抜くことの出来ないタイヤの特性も手伝い、進入時にはフロントのスライドは必須となっているようです。
その必要がない20世紀のライダーはというと、ウィン・レイニーはフロントを滑らすことで、走りの完成度のセンサー代わりに使っていたようです。
対してミック・ドゥーハンはフロントを意識的に滑らせはしないようです。
さらに時代を遡るスペンサーに至ってはフロントはどうでもいいというか邪魔者のような扱いです。
そのどれが一番最速のコーナリング(ブレーキングから立ち上がりまで)かというと、私には、フロントに依存しない順に速いように思えて仕方がありません。
フロントをスライドさせるのは一見高効率のようですが、手探りタイム&曲がっていないタイムがある上に、ブレーキング(制動)としてみてもさほど効率が良さそうには見えないからです。
フロントのスライドについて
フロントのスライドについての各ライダーの走法なりコメントを書籍からご紹介します。
ウェイン・レイニー
「軽く手を当てる感じでフロント・タイヤの上体を感知できるようにすると、、徐々にフロントタイヤが動き始めるのが伝わってくる」
「ほんの少しの間だけそのままでいれば、フロント・タイヤが減速しつつ摩耗しながらスライドを始める」
「このフロントのスライドをうまく保つのが、油断のならない慎重を要する部分だ」
ミック・ドゥーハン
「スライドさせたとしても、オッと、という感じで、膝が路面を掘るような滑り方をしている時のちょっとした瞬間でしかない」
バレンティーノ・ロッシ
「〜(ロッシは小刻みに揺れながらコーナーに入っていく真似をしながら、フロントのスライドを小さく抑え続け。リアをしっかりグリップさせ、コントロールしていく様子を説明してくれた)〜 。今だとこんなかんじなんだよネ、進入、膝、膝、膝、膝、でスロットルを開ける」
「もしも旋回中にフロントのグリップを失いかけたら。擦っている膝で路面をプッシュすれば、持ちこたえることができる」
以上『V・ロッシのコーナリング』より抜粋
補足すると、ロッシの膝擦りは、フロント周りの抜重とリアシートへの加重になると思います。
これは彼の体格とその深いバンク角によるところが大きいと思います。
確かにフロントのスライドし過ぎの抑制ができると思います。
微調整はつま先の立て具合でコントロールできます。
でもこれは、お遊びモードのパフォーマンスの走りで、本気モードの時にはアクセルコントロールで対応していると思うのですが真相は……です。
そもそも、体格依存でもあるので異なるバンク角や異なるコンパスでは、特性が一八〇度変わってしまうことがあるので鵜呑みはしないほうが良いです。
滑ったらそう対応する、ではなくそもそもそれを見込んだライディングでもあるでしょう。
リカバリが困難な理由
今も昔もクリップング付近のフロントからのスリップダウンのリカバリは困難なことに変わりはないでしょう。
有効な対策としては、なるべくその危険な時間を減らすことだったりします。
昔は(今でもいますが)立ち上がりで意図的にバイクを起こして加速体制に持ち込む走法は、加速するときにはバイクを起こそうという計画があるため、たとえ加速前にスリップしだとしても対応しやすいという利点がありました。
今はリアのグリップ力が有り余っているのかバイクを起こさな無くともグリップが確保できているようで、レインコンディションとか、よっぽど信頼感がないときとかに限られてきているように思います(もちろんタイヤの適正バンク角には調整していますが)。
進入から立ち上がりまで、スムーズに、境目なく走らなければいけないということは、ある意味リカバリする機械が作れないということを意味していたりします。
そして一番の問題が、肝心のフロントタイヤの状態が、コントローラブルではないということでしょう
操作が難しい理由
操作が難しい理由は明白です。
バンク角が深い時のフロントタイヤの状態では、いわゆるステアリング操作は、即命取りです。
どちら側にステアリングするにしても、スライド前の(多分)適正だった接地面が、大きけ減少するのみで増えるようなことはなく、トレールとか、荷重とかのジオメトリーも大きく狂い、向きだって思うようにかわりはしないからです。
もはやコーナリング中はには、ステアリングという操作はこのバンク角では存在せず、「ジオメトリーで曲がる」みたいな表現が適当でしょう。
そのような理由からは、そもそもフルバンク中のステアリング操作は出来ないので、方向性として、「バイクを押し下げるようにしっかりとシートに座っていれば……」(レイニー談)に代表される、昔ながらのハングオンやノリック乗り、シュワンツ乗り、ドゥーハン乗りがフロントゴケしにくいフォームといえるでしょう。
しかし、今や、件の超ピンポイントだけど高グリップ、そんなフォームは許してもらえず、肘も擦れちゃうミニバイク乗りです。
一見腕が伸びるまでの猶予がありそうに見えますが、そんな余裕はなくお手上げです。
一発触発、地雷もいいとこですね。
さあどうしましょ。
眠いので続く・・・

フロントに荷重しないといけないのに、ステアリングはこじれないという困難な要求がタイヤメーカーから突きつけられている




















