コーナリング番長 RR>マルケスのフロントゴケを斬る その3
コーナリング番長 RR>マルケスのフロントゴケを斬る その3
特効薬はダート乗り
ノリック乗りやドゥーハン乗りのようなダートトラック乗り風は、リアがジタバタしてもフロントは安定している時の走法といえるでしょう(フロント抑えこみ乗り)。

ノリック乗りの特徴の右手の抑え込み (© roadster)
加えて、モトクロスとかのオフロードでは、リアに加えフロントも安定していない時の走法といえるでしょう。

モトクロスも悟り中は半眼! 特に何も見ていないでしょう 内足の処理が大変

おまけ: モタードはハンドルにスライダーが必要! 足の処理が大変、体が固いとできない。外側の腕の肘の上がり具合が肝。
どちらも、ライダーが高次元になればなるほどその走法の特徴が薄らぐのが特徴的です。
これは、次元が高くなるほどに、正しい走法と、正しい対応ができているから、といえるでしょう。
なので、現在高次元で昔のことなど忘れているライダーの言うことを鵜呑みにしてはいけません。
例えば「ハンドルには手を添えているだけだ」みたいなの。
オートバイの持つ、自然なステアリング特性では、フルバンク時にはクイックすぎると前回説明しました(したつもり)。
そこで、先の、フロント抑えこみ乗りやステアリングダンパーが効をなしてくるわけです。
フリーにさせないで抑え込むわけですね。
しかし、今度はその対応が本当に適しているのかが問題になってきます。
ステアリングダンパーは、時間稼ぎやチャタリングみたいな共振の不協化には適しているにしても、どちらか片方面への長期的な切れ込みには結局屈してしまいます。
フロントゴケの幾つかは、このステアリングダンパーの無駄なあがきの終着点のような気さえします。
この場合はステアリングダンパーのダンパーの硬さに比例して転倒ポイントが奥にシフトしていくことでしょう。
素早くバンキング出来るのはいいがしばらくしたら切れ込んでしまう、のが特徴です。
対して、フロント抑えこみ乗りは、時間的なブレイクはなく、うまく行けばそのまま乗りきれることでしょう。
こちらの問題は、押さえ込みの方向が正しくない場合です。
抑え込みには、切れ込むのを抑える方向と、逃げて曲がらないのを押さえつけるのと2方向あります。
それを本人がどちらの目的で押さえているかをわかっていないと、よろしくありません。
うまく行けば乗り切れるけれど、逆だったらすっ飛ぶみたいな。
自身の行っている、抑え込みのりが、正しく効果を発揮できているのか、実は逆効果で不安定にさせているかの見極めを念のため行う必要があります。
さて、ダート乗りがロードレースにおけるフロントゴケに効果があるとしても、ダートトラック経験自体が少ない場合も、いきなりうまく使いこなせるとは限りません。
わざわざ違うジャンルの乗り方を覚えるよりは、望む効果が出る方法をダイレクトに見つけたほうが、効率が良いでしょう。
限界時の兆候
フロントタイヤが限界を超えた時や、セッティングを含めた乗り方が正しくないことを教えてくれる時の兆候は次のようなものがあります。
- 細かく振れだす
- 切れ込む
- ダダダダする
- いきなりすっ飛ぶ
- その他
これらのうち、正しく限界であるときの兆候と、そもそも走法が間違っている時の兆候とを区別することから始めましょう。
それと、それらがこれから対応可能なのか、もはや手遅れなのかの違いも重要です。
(いまさらですがこの記事の趣旨は、「もしかしたら転倒しないで済むかもしれない」為で、根本解決な訳ないし、「正しく正論」でもないかもしれないですからね。)
セッティングパーツ
フルバンク時の特性を変更できるセッティングパーツには何があるでしょうか?
簡略化のために一番ニュートラルっぽい、スロットルを開ける直前、あるいはスロットルを本格的な加速に向けて開ける直前に限りましょう。
と、ここでもう一度、ステアリングダンパーをガチガチに固めている方は一旦緩めるか、取り外してみることをおすすめします。
こと「議題がフロントゴケのときのステアリングダンパー」は転倒原因の発生と実際の転倒に時間差が生じてしまうので、原因を見極めにくいからです。
最終的にはフロントゴケの防止につながるステアリングダンパーですが、状態の把握時には邪魔者だったりします。
さて、改めて確認してみると、意外とサスの細かいセッティング変更には、フルバンク時の特性は影響されないということがあげられると思います。
微妙な変更では効果を体感できないので大幅に変更を加えてしまったりすると、進入時など他の場面でのセッティングが大きく崩れてきたりとか、収束していたセッティングがやり直しになってしまいかねません。
仮にフロントサスのフルードの粘度を変えたいと思っても、他の場面ではこの粘度が適している時などは、変えたくても変えられないジレンマが発生してしまいます。
またフロントの切れ込みを抑えるためにリアを押し出す、例えばスライドさせてしまうような、高次元な技が常に要求されてしまうのもよろしくありません。
通常のセッティング範囲ではなく大きくジオメトリーを変えることができるのはやはり電子デバイスでしょう。例えば徐々に切れ込むような兆候を感じたらリアのプリロードを下げて車高をどんどん下げていくとか。
でも電子デバイスはいいのですが転倒防止用のデバイス開発は開発ライダーが可哀想ですね。
んっ、それがマルケス?
この電子デバイスとステアリングダンパーより勝るものといえば、もちろんヒューマンデバイスですね。
ということで、ヒューマンデバイスの出番です。
データ収集
じゃあ、ヒューマンデバイスを使いましょう。
と、いったとたんに解決するようなものではありません。
どうせ、押すか、引くかのどちらかだろう、ではあるのですが…
先に例を上げたダートトラックの高次元なライダーと同様で、最終的に「押すか引くだけ」になったとしても其処までの道程は長いのです。
まずはデータ収集からです。

トレッド分割構造「3LC」を分かりやすく再現したカラータイヤ このコンパウンドの境目も怖そうですね。
己を知る
まずは、自身でセットアップしたマシンの特徴や、自分の乗り方の確認お意味を含めて。「押すか引くか」してみましょう。
ここで言う「押すか引くか」は操舵ではありません。
対象の動きに関係なく働く、重力と同じような操作です。
「押すか引くか」して、切れ込んだり、ふらふらしたり、とかのその時の特徴を掴みます。
そして通常行う、各パーツのセッティング変更も行なって、「押すか引くか」した時の特徴を記録して把握していきます。
そして、(ヤット登場)次に「空気圧」を変更してその特徴を記録していきます。
机上で考えると空気圧を減らせば減らしただけ状況は良くなるはずの特性がの実際との違いを記録し把握していきます。
机上では、切れ込みは減り、セッティングが外れていれば、より振動やチャタなどがより顕著になったり、いきなりすっ飛ぶことが少なくなるはずのものが実際はどうなるか(の傾向)を確認します。
もしも空気圧を減らすことで好結果がでてしまった場合には注意が必要です。
ニュートラルに戻す
これに限ったことではありませんが、セッティングを変更して、今までより良い結果になった時には、必ず、元の状態が本当に悪かったのかを確かめることで、より正しい評価ができるようになります。
セッティングを変更することで走りやすくなったとして、気持ちよくしばらく走った後で、念の為にセッティングを戻すと、意外と以前のセッティングでも同じように気持ちよく走れてしまうことが往往にしてあるからです。
そうでなくとも、一度そのより良い結果を見つけた後は、そこまで極端に変更しなくても、同様に走れる場合があるからです。
パーツ化する。
情報が十分整ったら、いよいよヒューマンデバイスの登場です。
セットアップしたマシンに合わせて、フロント周りをコントロールしましょう。
そこでやれることは「押すか引くか」か「操舵する」です。
「押すか引くか」はなるべく肩周りをフリーにして無理なく均等に力を加え(押し引き)続けられるようにライディングしましょう。
対して「操舵する」は操舵というより、固定に近いと思います。
もう無理やり「フルバンク中のステアリングの角度は此処」みたいにポジション(切れ角)を決めてそれを頑なにキープするような感じです。
フロントゴケしそうなときには、この二つの操作を行うことと決め、何もしないで備える(ニュートラルにする)というのは一旦選択肢から外してみましょう。
理由は、そもそも、気がついた時には手遅れで、「そうならないように対処する」的な対処だからです。
フリーで良い場合は、その対処が必要ない場面として、別扱いにするほうが、管理しやすいと思うからです。
この操舵には力が必要だったり、どこか支点が必要だったりします。自分のライディングに合わせて良い方法を見つけます。
この操舵(固定)はジムカーナのハンドルロック走法に近いものがあります。
初心者は返ってふらふらしてしまいますが、高次元なライダーは別次元の走りができたりしていることでしょう。
いったん適度な操舵とかが見つかったら、これを補うのにステアリングダンパーが使えます。
その代り「押すか引く」のには逆により力が必要になってしまうので、バランスが必要だったり、そのさじ加減を把握しておく必要があります。
まとめ
フルバンク時のクリッピング付近では、その時の特性を、いわゆるマシンセッティングなどで改善するのにはリスクが大きい。
そのため、まずはタイヤの空気圧を変更することで、その時のマシンの傾向を掴み、その掴んだ傾向を元に、ヒューマンデバイスでその時の特性をより良くするべく補うことができるようになる。
フルバンク時のチャタや切込みを感じたら、フロントサスのセッティングではなく、まずは空気圧を下げてみることから、始めてみようということだ。
これはライダーはもとより、スタッフこそが率先して導くとよいでしょう。
このようなセッティング、走法を時間を作り試しておくと、気が付くとフロントゴケが減少しているかもしれません。
お試しください。
もしも、これらを試した結果、空気圧低目が気に入ってしまい、常に一般的な適正値より低めになってしまったら……
空気圧の低め、高めはの調整は、コースに合わせて決定するとわかりやすいと思います。
次回予定の、「下り坂番長」も習得しておくと、気休めになりますのでどうぞ。
以上
コーナリング番長 RR>マルケスのフロントゴケを斬る その3
でした。
(全然固有の問題ではないのでマルケスの名を使う必要はありませんでしたね。)





















