進入時のテールスライドが必要な理由 その3 脚出し走法
進入時のテールスライドが必要な理由 その3 脚出し走法
テールスライド(侵入スライド)の前に、改めて脚出し走法をおさらいしてみましょう。
脚出し走法
ロードレースに置いて脚出し走法、すなわちコーナリングのアプローチ部分で旋回方向の脚をだらりとステップから脚を外す行為のこと、には次のような理由・効能が考えられます。
- ステップ踏み換えのため
- 血行のため
- バランスのため
- マシンとの一体化のため
- 重心を下げるため
- ダートトラック走法の流用
- 精神的な安心のため
- ハイサイド防止のため
脚出し走法をする理由・効能
ステップ踏み換えのため
いきなり本命の、おまけに走法と言える輩のものではない、単なるステップワークのための脚出しです。
シフトダウンや、ブレーキングのため、あるいはストレートでポジションである土踏まずの部分でステップにのせているいる足を、爪先立ちに乗せ変えるなどのステップワークのために一旦ステップから足を大きく外してしまえという理由です。
ステップへの踏み替えは、思った瞬間にできるものではなく、それまでの体制によりやり易かったり、し難かったりするので、場面によっては大きなアクションを伴わせないとできない場合があります。
特に土踏まずで支えていた状態から爪先立ちには、足全体を上後方に持ち上げる必要があり、思っただけで動いてくれることはありません。
この一巻簡単そうなステップへの踏み換えが場面によっては大げさなアクションが必要になる(※)ので、それならせっかく足を外したついでに、この後に述べている効果も見込んで「すぐには戻さない」という動作を加えるのがこの走法の特徴となるのです。
なお、見ている限りでは脚出しをするタイミングは不規則だったりするので、リアスライドやバンキングのタイミングのために出すというのには微妙に却下してますが。もちろんそれらのアクションのタイミングのためにも使うこともできるでしょう(だとしたら精度悪すぎですが)。
※もちろん減速による慣性を利用してのステップの踏み換えが一番簡単で一般的なのは言うまでもありません。
血行のため
バンク角確保のためにますます窮屈なポジションでのライディングなので、一時の骨休めになることでしょう。
バランスのため
サーカスの綱渡りでその効果は証明済みですね。
重量物としてではなく、マシンと離れたところにセンサー(脚先)を設けることは、スライドなどの姿勢変化の程度を知るには良い方法でしょう。
マシンと一体化している時とは異なり、マシンの挙動が脚先には反映されないことで、差が発生することで状況がわかりやすくなります。
マシンとの一体化のため
片側の脚のステップ荷重をやめることでシート荷重の配分が増えることにより、マシンとの密着度が増える効果があります。
それはイコール、余計なお釣りが減るということにつながります。
予測不能なスライドなどが発生した場合の、ライダーの取り扱いについては、二つの考え方があります。
一つはマシンとライダーが分離していることでマシンの挙動を抑えられるという考えです。
もう一つは、先のやり方がうまくいかなかった時のさらなる状況の悪化に比べれば、分離させるのではなく、一体化させる方が良いという選択です。
一般に高次元なスライドコントロールはこちらの一体化の方に分があるのではないでしょうか。
しかし、両足での荷重に比べシートでの荷重は、バランスコントロールの高度な能力が必要とされるため、いきなりできるものではなく、その領域に達していないうちは、ステップ荷重の方がまだマシでだったりすることでしょう。
一体化するイコール重心を下げるという言い方をされることもありますね。
一体化、マスの集中化はこの場合客観的には重心は高くなってしまうのですが、ライダー目線ではマシンとくっ付くので重心が下がったように感じられるでしょう。
重心を下げるため
重心が下がるのではなく、そのままステップに足を乗せていると重心が上がってしまうのを抑制する効果があります。
「マシンとの一体化のため」のところでも触れましたが、ステップ荷重は、外乱に対しての結果が「マシンとライダーが離れてしまう」ということがあります。
荷重への反力で膝が伸びてしまうのです。
また上半身を動かす動作でも必ず伸びてしまいます。
(かといって、シート荷重したままでは腰をスライドするのは困難ですが…)
つまりシート荷重に比べるとステップ荷重は「外乱のたびにライダーが伸び上がる」と言えるということです。
ところが、ここで片足のステップ荷重を止めてしまうと、外乱が脚まわりで吸収されることなくそのまま上半身に伝わるため重心は比べると下がるという結果になり、ライダーの横移動をするときには、上下運動ではなく横方向のモーメントによって横運動できたりします。
ダートトラック走法の流用
スライド走法のために行っていた何らかのタイミング出しや、状態を同じように感じ取るために行っていると言えるでしょう。
いざリアタイヤを滑らそうというときの動作を、あれこれ意識しなくても、体が動いてくれるし、気持ち的にもタイミングが取りやすかったりすることでしょう。
ダートトラック走法事態は奥が深いし色々な手段があることでしょうが一例を挙げると、
「スライドさせる」というアクションを「シートをおし下げる」という感覚で行っている場合は、内脚を外した状態で「上半身の抜重」のタイミングで横スライドを始めることができたりします。
ただし、ダートトラック走法は一般的には上半身の硬直が伴って重心が上がってしまう場合があるので要注意でしょう。
もちろんスーパーライダーは一般人ではないのでダートトラック走法自体を抜重アクションとして行っているかもしれません。
安心感のため
そもそもスライドの練習で行っていたダートでの走法の名残で安心感があるのかもしれません。
ダート走法とは関係なしに、「転びそう」と思われる時に地面に近づいておくことの安心感は計り知れません。
ハイサイド防止のため
別の記事で説明済みだと思うのですが改めて・・・
イン側の脚をステップにのせていないということは、そもそもリアのタイヤは外側に流れがちです。
そしてバランスを崩した時には、マシンはイン側に倒れがちになり、ステップ荷重するとしたら外側のステップ荷重ではあるのですが、そもそも初期の段階はシート荷重なので即外脚荷重はしにくいでしょう。
ダートだとそこでイン脚の蹴り(支え棒)で外脚荷重にできますがロードではありません。
そのようなわけ?で非常時のマシンはイン側に倒れる一方で、なおかつハイサイドのようなグリップ回復にはなりにくいと言えるでしょう。
すなわち、ハイサイドになりにくいといえます。
ところがです。
ダートで試した限りでは、脚を出しても、ステップにのせていても転倒率は変わらなそうなのです。
とはいえ、脚を出していた方の安心感がハンパない。
そして、乗せている時の脚を出したい感もハンパない。
そして、脚を出している間の、見た目の格好悪さがハンパない。
そして脚を乗せたら乗せたで、そのポジションでの走法や慣れが必要なので、それなりに時間が必要になります。
こんなところでしょうか?
ダートトラックとロードトラックでの走法の違い
ダートでの走法の特徴と、ロードレースでの走法とは微妙に違いがあります。
一番の違いはダートトラックでは、コーナリング中にイン側のステップに足を乗せておく必要がないのに比べ、ロードでは出しっぱなしとはいかずにコーナリング中はイン側のステップに足を乗せておく必要があるということです。
ロードでは足を戻さないと色々と不都合が生じるのですが、ダートではステップに乗せておくよりも、積極的に地面と仲良くなることで、コーナリングを安定させたり、転倒を免れたりすることができるのです。
ダートコースではブーツを地面につけてもグリップしないので滑らすことができるからです。
柔軟な動きも要求されるロードのブーツに比べ、転倒することが前提のオフロードバイクは靴底が頑丈に、また固くできてたりもします。
同じ方向にしか回らないダートトラックではゲタと呼ばれる鉄板でできたスライダーを履いてより足つきが楽なようにすることさえあります。
違いはこのくらいにして肝心の、脚出し走法の仕方について話を進めましょう、
脚出し走法の仕方
- ブレーキングや、シフトダウンなどの操作が終了したら、あるいは中断してもよくなったら、旋回方向のステップから脚を外します。
- 外した脚を邪魔にならないところに持ち上げておきます。
もしも芸術的に決めたい場合は日本スケート連盟のスパイラル・シークエンスを参考にしてください。
ただし、そもそも男性の場合は加点対象ではないようだし、すでに廃止されたとか…※ - 適切なタイミングでステップに脚を載せ直して、脚出し走法を終了します
簡単ですね
ただし、ダートでの低次元な練習でしがちな、リアが流れ過ぎたあとにイン脚で荷重を受け持ち外脚でバランスが「取れてしまう」練習はハイサイドが待ち受けているので、そういう練習方法はしないことをお勧めします。
それでは侵入スライドについて
・・・は次回に

正しい脚出し走法の図
ロードレースの脚出し双方を見るにつけフィギュアスケートの難易度に感心してしまいます。
そのスパイラルについて、とても詳しく解説している映像を見つけたので貼り付けます。
ちなみにタイトルは皮肉を込めているようです…
フィギュアにおけるスパイラル・シークエンスが2010年で廃止されたように、
MotoGPにおける脚出し走法も2016年には廃止になり、死語になるかもしれませんね。
せっかく書いたのに………
では。
進入時のテールスライドが必要な理由 その3 脚出し走法
でした。





















