先頭を走行中に、後続車両がスリップストリーム圏内に入られると、空抵抗が増して後ろに引っ張られます。
そしてその結果、先頭ライダーは単独走行時より速度が落ちるというのです。
片や速度が上がり、片や単独走行より速度が落ちる。
しかし集団でスリップストリームを形成するとラップタイムは上がる
微妙に腑に落ちませんよね?
きっと微妙に説明が足りていないのでしょう
ちょっと考えてみましょう。
まず空気抵抗ってなに?から
まず前面の抵抗は例えると、
サスケのウォールリフティングみたいな感じ。
次々と立ちはだかる空気の壁を押し破って突き進みます。

空気の壁を押しのけるダイク
そして
あるいはそのまま前方に空気の壁を押しやります。
「天突き」に入れられて「突き棒」に押し出される「ところてん」みたいな感じ。

トンネル内の空気の説明図
空気(ところてん)、車(突き棒)
意外や意外、トンネル内では単独走行の場合の空気抵抗が増してしまうようです。
・・・
行き詰ったので違う方向から説明してみます。
空気抵抗は、速度の2乗と空気密度と前面投影面積と空気抵抗係数(cd)を掛け合わせたものだそうです。
人(大の字状態の大人)の場合のcd値は0.24ぐらいといわれています。
そのへんから飛び降りると終端速度は200Km前後となります。
意外なことに、終端速度に達するまでには400mほど、時間にして10秒以上必要なことがわかりました。
http://keisan.casio.jp/exec/system/1238740974
実際に飛び落ちてみると、加速度は感じず
瞬間的に終端速度に達したように感じたのですが、体感以上に時間も距離も必要なのでした。
さらに、バンジーの場合ではほとんど終端速度には達していないこともわかりました。
以下の例ではたとえ川面に達したとしても140Km未満でしょう。
この間傍観したときにははるか上空で折り返していました。

http://www.bungyjapan.com/
やはりサーキットのほうが……
鈴鹿のストレートで不用意にピットボードを見るために頭を上げると
通常の終端速度以上のスピードでのパラシュートの開花もどきを味わうごとができます。
代償は首に痣が……
ちなみに空気抵抗というだけあって空気が薄くなるとこの係数は当然低くなります。
つい最近世界最高記録を達成したグーグルのアラン・ユースタス上級副社長の場合はというと、
cd値は0.005ぐらいではないでしょうか(憶測)。

米西部ニューメキシコ州ロズウェル上空約41キロの成層圏からスカイダイビングに成功、高度世界記録を更新した。 気球を体から切り離すと音速を上回る最高時速1322キロで落下し、パラシュートを使って約15分で地上に戻ってきた。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1410/28/news053.html
で、
せっかくの物理的な出来事、うまく利用できないか見直してみましょう。
電車はオタク業界なのでネットに情報がそろっていたりします。
ちょうど都合よく1両目が前面、2両目以降が側面、最後尾車両が後面と考えるといい感じです。
複数車両の電車が走っているとして、空気は電車により次のような状態を引き起こされます。
・加圧(前面)
・摩擦(側面)
・負圧(後面)
さらに
・渦巻き(後面)
・移動(いろいろ)
説明するまでもないですが前面では空気を押し出し、側面では空気との摩擦、後ろ面では時間的な遅れと乱れによる負圧、
そして主に前面から押し出された空気の移動があります。
ちなみに空気は1立方メートルで1.2Kg位だそうです。
最初の3項目は良いとして、4つ目以降の渦巻きや移動は条件次第で変わってしまう項目です。
というより常に同じ状態はないといったほうがよいぐらいではないでしょうか。
トンネルの中と大空の下(電車オタク的には「明かり区間」)では大きく異なることはお判りでしょう。
空気抵抗の割合的には中間車両1両を1として、前面が10、後面が2~3程度、だそうです。
これによると10両編成では前面と側面の抵抗が同程度になるということです。
山手線の全周にわたり電車を隙間なく配置してぐるぐる回ったら空気抵抗はゼロになる
わけではないようです。
空気抵抗が10円玉程といわれる、空気抵抗値が非常に低いペンギンの場合、
ほとんどが側面の摩擦抵抗が主になるようです。
その側面の抵抗が低いのは空気の泡によるものだそうで、
ゴルフのボールの穴(ディンプル)と同じような理屈ですかね。
このディンプルは自動車でも有効なことが証明されています。
http://gigazine.net/news/20091103_dimple/
電車に戻って、明かり区間を1とした時のトンネル区間は……
トンネル区間のほうが空気抵抗値は大きいのですが、
調べた資料ではいきなり違う単位で説明していて理解できず。残念。
どうせトンネル毎に値が違うであろうので無視してしまいます。
物理業界でもこの辺面倒なのか、合わせて空気抵抗係数と呼んでいるようです。
さて、これをバイクで改めて考えてみましょう
バイク単体で走行中の空気抵抗の割合が先の数値の合計、14としてみます。
ここに1台のバイクが割り込み同じスピードで走行した場合は、
前車が11、後車が4になります。
これが3台になると前車が11、中間車が1、後車が4になります。
これを鵜呑みにすると、単独で走行していたバイクは、後続に張り付かれた途端空気抵抗が減ってさらに加速……
ということで説明に必要な要素が足りていないことがわかりました。
誤りの原因は、空気抵抗係数です。
先にふれたとおり、環境が変わるとその数値は変わってしまうのです。
割合は計算通りだとしても、空気抵抗係数が増大してしまうのです。
先の例では、前車と後車の割合の合計の15程度(適当です)に抵抗が増してしまうのに比べ、
後車は5とか6とか(適当です)の抵抗で走行できることになるのが正しい説明となります。
さらに今まで触れていない「渦巻き」がそもそもの空気抵抗だったりするのです。
スムーズに流れていた空気が乱流というか渦巻きしだすと、それが走行抵抗になるという。
平均値はともかくリアルタイムの空気抵抗係数なんて何の役にも立たなさそうですね。
とにかく空気が運動したらその分のエネルギーは、原因を起こした元から得ようという魂胆なようです。
そのため空気抵抗の単位はジュール(N)と運動量だったりするのですね。
というかネットで通常に説明されている空気抵抗の説明って、
ことレーシングスピードでのバトルの説明をするためにはすこし事足りないようです。
渦巻きのあたりは素人には手が出ないので割愛です。
ここまできて撃沈です。すいません。
まあとにかく、
空気が元?の位置に戻るためのエネルギーと空気抵抗がイコールということで。
さて、
肝心のスリップストリームを利用したバトルについてです。
レース中に使える要素としては、上述の説明の中でほとんど説明をしていない渦巻きです。
すなわち抵抗を武器にすることです。
以前に、前走車に追いつきスリップストリームを使って抜くときの斜め抜きを紹介しました。
さらに今回は積極的に、前走者に置き土産を手渡す走法を考えてみましょう。
追い抜きがてらに、前走者にさらに高い空気抵抗係数をプレゼントしてしまおうというのです。
共倒れではないかとお思いでしょうがこの場合、ごくわずかな時間差を利用します。
物事すべてにタイミングがあり、
タイミングとは、ことを始めるタイミングだけではなく、
ことが始まるタイミングもあるということです。
利用するか、利用されるかもタイミング一つということです。
同じ負圧でもタイミング次第で、減速にもなり加速にもなるということです。
高まった加圧を利用することもできます。
ラップタイム的には遅くなったとしても、
前車との速度差が大きくなるのであればそれは採用の価値はあります。
スリップストリーム圏内に入るためにジタバタして前走者の後ろの気流を乱すのもありですし、
スリップストリーム圏内に入ってからもバタバタして空気抵抗係数を高めるのも良しです。
しかし、たぶん、そのタイミングは非常に微妙です。
また、条件が固定でないので各自の経験が必要となることでしょう。
実際にGPでもそれらしいことをしている場面もありますので観察してみてください。
よ~く見極めて、使い分けましょう。
今回の走法は安全を優先してください。
速度差の見誤りが命取りになります。
おすすめはネチネチと相手のバイクにくっつくことです。
統計的には、遠くからのアタックに比べ、
ネチネチした接近戦のほうが負傷の度合いが圧倒的に少ないかと思うからです。
マルケスをはじめとした小排気量系のライダーが参考になることでしょう。
では。

いい感じのジャック・ミラー
お礼と今後について:
平素は本サイトをご愛願を賜り厚くお礼申しあげます。
ネタも尽きてきたそんな年の瀬、読者様よりご意見メールをいただきました。
待望の「見るに見かねてメール」です。
たいへん深い考察で、実際の一流ライダー、ドライバーのセッティングや走法を解説していただきました。
残念ながらそのままの掲載を本人様がご辞退してしまったので、メールの内容をもとにネタを展開していこうかと考えています。
より具体的なライダーやドライバーの紹介や解説、そして各種解説本の前向きな攻略法とかとか……他の皆様の「見るに見かねたメール」や各種ご質問等もメールいただけると幸いです。
ということで来年もどうぞよろしくお願いします。
mirai@superjetter.com




















