タイムアタックから体アタックへ
「自分の敵(ライバル)は自分自身で、己のベストを尽くせば結果が伴います」
というのは個人戦のお話で、同時進行で競い合う競技ではそれだけでは足りない場合もあります。
レースにおけるアタック
ことレースにおいては「己のベストを出せば勝てる」というのは、ある意味低次元でのお話と認識しておく方がよいでしょう。
なぜなら、競技のレベルが高次元になればなるほど、肉体的、物理的な限界に近づいていくからです。
そして個々の能力、マシンの差が、頂点に近づくため明確な差にはならず、五十歩百歩な状態になっていくからです。
そこでは、単純なタイムアタックだけではなく、ライバルとの競い合いが必要になり、場合によっては攻撃的なアクションのようなものが必要とされる場合も生じてくるでしょう。
レースに勝つためには、よりよいスターティンググリッドの確保と、ライバルに競り勝つためのタイムアタックも必要ですが、
よりよいリザルトのためには、プラスしてライバルとの直接的な折衝脳力も必要とされます。
(それを称してタイアタック、と言うローマ字言葉がてっきりあると思っていたのですが、調べてみるとありませんでした。
自分だけの造語だったようなので、改めて体当たりの意味で体アタック、と引き続き勝手に呼びます。)
体アタック
そのライバル達への体アタックですが、
それを行う境遇は様々です。
- 勝ちたい
- 負けられない
- 喧嘩っ早い
- 負けず嫌い
- できればやりたくない
- やるのが当然
例えばカピロッシやマルケスに代表される「危ないライダー」と称される歴代の方々ですが、評価が正しくない場合もあります。
ローカルな話ですが私の同僚?のライダーの話を。.
その友人S氏は阿部孝夫みたいなものでした。
その時に乗っていた後方排気の89TZの遅さも手伝って、皆と同じように普通に走行したら、どこでも誰にも勝てない不遇な環境です。
そんな彼がそれなりの成績を収め頭角をあらわせたのは、ひとえに、人と同じではない走り方をしたからに異なりません。
それは、比較して、効かないブレーキと、高トラクションによる高いコーナリングスピードを活かした走り方です。
その結果、いくつかのコーナーの手前のブレーキング区間では、後方からまるでボーリングのピンのように周りのライダーを蹴散らして、トップでコーナリングしていく姿を見ることができました。
コーナリング中でも、後方からイン側から割り込むことができ、当然高いコーナリングスピードを維持したワイドなライン。
ここでも弾き飛ばしてしまっていました。
そして体重がハンディになる他のセクションで抜き返されてしまうため、その光景は毎週繰り返されたりしました。
傍から見ている分にはレースを盛り上げてくれる、面白いキャラクターですが弾き飛ばされる方はたまったものではありません。
その走りは危険な行為であり、危険なライダーだと避難したりします。
さて、これは、本当に、危険な行為でしょうか?
これは、皆が阿部孝夫波の体格であったなら、普通の走行、普通のコーナリングラインと呼ばれたことでしょう。
彼だけが他のライダーと特性が異なっているだけです。
どちらかというとハンディを負っている彼に、レースの参加資格はないのでしょうか、ましてや追い抜いてはいけないのでしょうか?
接触に関しても、彼は毎周、毎コーナーが接触な場面なので、実績、経験は豊富です。
彼からしたら、他のライダーが経験不足すぎ、恵まれた環境すぎ、という事になります。

さらに、フェアに戦うにしてもメンタルは強くなければいけません。
「譲ってもいいや」では勝てないのです。
そのメンタル合戦は、思うだけでは伝わらず、相手に分かるように表現しないといけない場合もあります。
そしてその状態は、ほとんど臨戦態勢というか、けん制しあうというか、実際にぶつけた方が判りやすかったりするわけです。
ということで、
安易に「危険なライダー」呼ばわりすることは考え物、というか、恵まれた環境に育ち過ぎたといわれてしまいかねません。
慎重に、危険行為かどうかの判断を見極めるようにしましょう。
そして危険なライダーと呼ばれているライダーのその経験値というか能力は、自身にも必要な能力と認識すべきでしょう。
人それぞれ
ということで、そもそも、人には人の道(ライン)があるということを認識しましょう。
あなたがそこにいるから悪いのです。
そしてあなたが邪魔ならアタックされるし、勝ちたかったら邪魔者をアタックするのもやむを得ない。
では体アタック、やってみましょう。
次回に。
※登場する故阿部孝夫 さんをもちろん一切けなしてはいません。。




















