芸術的な切り返しの仕方  RR>切り返し

 

2015年第5戦フランスの勝者マルケス

オンボード映像

2015第4戦フランスGP(決勝5/17)では、シートカウルからのオンボードでホルヘロレンソ、バレンティーノ・ロッシ、マルク・マルケスのオンボード映像(車載カメラ)を同時に見ることができましたね(日テレG+の無料放送)。
(残念ながらアンドレア・ドビツィオーソの映像は調子が悪くて見れませんでした)
シートカウルからの映像は、ライダーのお尻と背中が邪魔をしてせっかくの路面の映像が良く見えなくて残念なところですが、ライダーの動きを見るのにはうってつけです。

そこで今回の映像をもとにS字コーナーなどでの切り返しの仕方を説明します。

三者の違い

単独で見ると漠然と「うまいなあ」くらいにしか思えないのですが同時に見ると違いが見て取れます。

今回見れなかった方は、ぜひとも次回は見比べてください。

 

比較して違いが一目瞭然だったのが切り返し時のライダーの腰の動きです。

ロッシ:遅い
マルケス:雑
ロレンソ:速くてスムーズ

通常の単一コーナーも同じですが倒し込や、切り返し(更には立ち上がりもですが)は素早くできるに越したことはありません。
更にスムーズにできれば直よしです。

まずは素早く次にスムーズ。
「スムーズに」はレースでは後回しです。
なぜならそこから発生しがちな「コーナリングラインの無駄」は、その後取り返すことはできないからです。
レースは、「いかに速く走るか」という漠然とした目標ではなく、「いかに大きなRで旋回できるか」のほうが技術的に前向きです。
なので、「可能な限り大きなRを作り」、そこを「いかに速く走るか」となります。※
その、大きなRを作るためには、倒し込のスピードが直結してきます。

※広義のラインのことではありません、たとえインベタだとしても可能な限り大きく、イコール速く、イコール短時間でということです。

話はそれましたが、切り返しのスピードが遅いといわれたら「技術的に未熟」とか、「ピークを過ぎた」といわれたのと同じことになってしまいます。

この機会に誰よりも速く切り返しちゃいましょう。

 

2013年第4戦シルバーストーンのロレンソ、マルケス、ペドロサ

2013年第4戦シルバーストーンのロレンソ、マルケス、ペドロサ

芸術的な切り返しの仕方

ハングオン限定

切り返しを芸術的に行うためにはハングオンが必須です。

何かと悪者の「ハングオン」ですが、切り返しに関していえばハングオンが一番効率がよく、スムーズに安全に行えると思われるからです。

リーンウィズのように頭を振り回したりすることも、リーンアウトのように切り返しのタイミングを見失うこともないからです。
ただ、ハングオンなら何でもいいかというと、そうでもありません。

ダートトラック系や長身系のライディング(フォーム)は芸術的なライディングには適していません。

それでは、正しい方法を身につけましょう。

今回紹介する方法は、通常の方法と比べ、ある点で180度異なり、その結果非常に芸術点の高い走法となります

 

サマリー

  • 切り返す前に上体を少しマシンより浮かし気味にします。
    (浮かす量は次のアクションで必要な分です)
  • 遠心力の方向(すなわち水平)に上体(主に腰回り)を切り返す方向に移動します。
  • 移動した上体(おしり)を切り返す側のシートの角にぶつけます。
  • ぶつけた勢いでマシンの切り返しを行います。

大まかにはこれだけです。

 

詳細

前提

  • お手本ライダー

    基本的には今回のロレンソのような切り返しを行うことを前提とします※。
    オンボード特有の、肩回りと腰回りを比較したら腰回りが大きく移動し、肩回り、すなわちハンドル操作を行うコントロール部分は最小限の動きとなるように動きます。
    そして動作は一回の動作ですべてが完了するような感じです(ワンショット)。
    ちなみに切り返しに限りませんが三者とも腰をワンショットで決めて、微調整を上体で行うスタイルです。これはタイヤの接地個所(接地面)を一定にそろえるための走法になります。
    ※ロレンソの走り方のコピーではなく、なんとなくのイメージとしてとらえてください。

    ※別にロッシが遅いと責めてはいません。スムーズで安定した良い走りだと思います。
    ただあわただしいマルケスの走りはいただけません。これはHONDAのパッケージとしては失敗作でしょう。

  • 可能な限り前傾したフォームが好ましい

    理由は切り返し時のバイクの円運動とは体の動きを分離したいためで、上体が起きているとシートの円運動を直接体が受け止めてしまうことになるからです。

  • 頭部はミニバイク乗りのようにガソリンタンクから離れている方が好ましい

    理由は切り返し中にヘルメットとガソリンタンクがぶつからないようにするためです。

  • シートは自由度が高い方が好ましい

    シートストッパーでライダーのポジションを固定しているタイプや、マルケス、ペドロサが採用しているシートストッパーというか2段シートは邪魔になりかねません。
    理由はライダーの移動の中心がハンドル付近を中心とした腰の振子運動になるため、切り返し中の中立ポイントでシートエンドが引っ掛かりやすいからです。

  • 切り返しを行う前に荷重をステップ荷重に移しておく必要がある

    理由はシート荷重じゃあ体の移動ができないからです。
    その際に実際に腰回りを浮かすか、バイクより遠ざけることもできるようにしておく(体力的、態勢的に)。

手順

  1. 切り返す前に上体(腰回り)を少しマシンより浮かし気味にする

    気分は腰だけ浮かす感じです。
    浮かす量は適量というか次のアクションで必要な分ですが、最初は分からないので大げさに浮かしてみます。

  2. 遠心力の方向(すなわち水平)に上体(主におしり)を切り返す方向に移動する

    浮かすために加えた加重のリリース(抜重)と切返しのための腰を降り出すための加重を行います。
    この時の上体(肩より上)はハンドルに対しての位置関係が変わらないように心がけます。

    肩だけを見たらリーンウィズのように動きます。もちろん必要な場合は動かしますが、その際はバイクから見て水平に動かします。
    対して腰回りは地面から見て水平方向に動かします。
    遠心力だけで水平移動にする感じがよいでしょう。
    移動するきっかけで加えた加重が大きすぎると、伸び上ってしまうので注意が必要です。
    前後サストもボトムしたまま切り返しが完了させるのが理想的です。
    頭部の位置もガソリンタンク(シェルター)にぶつからない程度に低く抑えると、余計なおつりも視界の変化も少なくて良いです。

  3. 移動した上体(おしり)を切り返す側のシートの角にぶつけます。

    シートを通り越すように移動するのではなく腰をシートにぶつけてしまいます。
    理由はなるべく低空飛行のほうがよいことと、トラクションをかけることに使えること、場合によってはバイク自体の切り返しタイミングに使えたりすることが理由です。

  4. ぶつけた勢いでマシンの切り返しを行います。

    ライダー先行にするか、バイク先行にするかでここでの動きは変わります。
    旋回性重視であればバイク先行で、不安な要素があるのであればライダー先行で動きます。
    バイク先行の場合はぶつけた行きをいをそのままバイクのバンキングに使い、ライダ先行の場合はぶつけた後もライダーは動き続けます。
    見た目の芸術性ではライダー先行型のほうがおつりも少なくコントロールできるが、バイク先行のほうが切り返し&旋回性は上がるのでバイク先行からライダー先行に、シフトしていってもよいでしょう。シートのはじあたりにお尻をぶつけるのでも、その付近で大腿部をタンクに押し当てるのでも一緒ですが倒し込スピードは腰回りのほうが速く動きます。
    なお、ぶつけるという表現を使っていますが、実際にはぜんぜん異なる動きでも構いません。膝を使っても良いですし、シートとつなぎの摩擦でも構いませんが、気持ちはぶつける息合いが必要です。

以上です。

抜重移動でおこなうこと

通常の切り返しとの一番の違いは、切り返し中が加重ではなく、抜重移動だということです。

(とはいえ加重はもちろん必要です)

切り返しの一連のアクションを、事前に蓄えたエネルギーを利用することで、一気に移動することが可能になります。

余計な反動が起きないことと、抜重による運動の場合さらなる加速がやりやすいことも有利に働きます。

注意点は、切り返しのハンドリング自体が重たい時、重そうなときに。それにつられてゆっくり動かないことです。ハンドル操作のスピードと、腰回りの動きは完全に分離できるようにしておくと幸せになれます。

 

 

仕上げ

とりあえず目標とする素早い切り返しが、そこそこ出来るようになったら次にトラクションと視線に目を向けます。

 

トラクションコントロール

まずはペドロサの位置からマルケスの位置までです。

旋回中はもちろんのこと、切り返し中にもなるべく路面にトラクションがかかるようにもろもろのタイミングや位置を工夫します。
もちろん荷重をかけたくない時の切り返しの役にも立つのでまずはかける練習です。

上の写真のペドロサの位置がスタートです。

トラクション、すなわち遠心力等の慣性や、加重、荷重、フロントの当舵、アクセル、ブレーキなどなどのすべてに関連してそもそもの切り返しスピードに加えてトラクションにも影響しています。

フォーム的には腰の浮かし方や位置、頭の位置、肩の位置を見直し。調整します。

 

その結果が切り返し中のマルケス(の写真)にあらわれます。

もっと頭を下げることも可能ですが、マルケスマシンではシートエンドの関係で限界かもしれません。

可能ならもっと低い位置に設定しましょう。

視界コントロール

ペドロサからマルケスの位置までは時に何かを見る必要はありません。

切り返しがうまくいくよう、何も見ないか、何か目標をぼんやり見ましょう。

マルケスの位置からロレンソに移る途中にはじめて、切り返し、および切り返し後の走りに必要な情報が手に入ると思いましょう。

反対に言うと、この地点までは、何も見えないってことです。

自身のバイクが邪魔だったり、路面のカントで何も見えなかったりするからです。

必要なのは切り返し前のタイミング情報、次は切り返しがほとんど終わったころの出来栄えを確認することと、その先に進むための情報です。

これは、ここで必要なのことは対した情報ではないということです。

そう認識し、視界はどうでもよいと認識し、切り返しの精度を高めることに専念できるように、「見るのを放棄」しましょう。くどいですが半眼がおすすめです。

気分は水平

水平運動には、地面に対しての平行運動と、バイクに対しての水平運動とあります。

特にバイクに対しての水平運動とは、最短距離をズバっといった感じで動くことです。
もたもたと腰を持ち上げるような運動はすべてにおいて格好悪いということです

「よっこらせ」より「シャキーン」な感じで。

 

実際とは異なることは重々承知の上ですが。

頭の中では、切り返し時の動きは水平に動くようにイメージしましょう。

というのは、間違ってもバイクの描く円弧の通りには動かないようにしましょうということです。

そして腰回りと、肩回りは別々に動けるようにしましょう。

それぞれが最適な動作になるように計画します。

そのためにはなるべく前掲のほうが、胴回りと肩回りを別々に動かしやすくなります。

 

傍目での見分け方

単独でオンボード映像観てもその芸術さ加減はあまりわからないのですが、観客席から見ていると違いがはっきりと分かるときもあります

上の写真のマルケスの状態の時です。

通常の切り返しでは切り返し中の直立したあたりでバイクもライダーも伸び上って「ピョコタン」しています。
対してこの走法では、ライダーが飛び上がって見えるようなことはありません。
またこの付近で荷重コントロールと当て舵(強制的なステアリング)がうまくいくとバイクも伸び上りません。
なにより小排気量マシンが追い上げているときのような、闘争的に見えます。

まとめ

効能

通常の切り返しでは、ステップに対し踏ん張ることで、上体(腰回り)の移動を行うきっかけとしています。

切り返しを行うタイミングで加重していたのではタイミング的に手遅れなことと、加重の方向が移動方向でもなく、マシンへの挙動も大きくなりがちでした。

これでは効率がよくないことは明白です。

そのうえ悲しいことに、クイックに行おうと思えば思うほど、マシンの挙動もライダーのアクションも大きくなるだけで、スピードはさほど変わらず、単に雑なライディングになってしまいがちです。

 

今回の抜重をメインとした切り返しでは数々の点でメリットがあると思います。

アクションを起こす前に、明示的な加重区間を作ることで、切り返しの動作自体を加重から解き放すことが可能となります。

ライダーをいったん持ち上げる動作からは解き放されるので加重や抜重を純粋にライディングに対しおこなことができるようになります。

加重の動作では行いにくかった切り返し中に「伏せる」ことも可能になりました。

最短距離の移動で済むこともクイックさにつながります。

最小のアクションで済むということは、より精度の高いコントロールができるということでもあります。

 

押してダメなら引いてみな! ということです。

お試しあれ

応用

この切り返しができるようになると気が付くことがあります。

普通の直線からのバンキングが遅すぎること、もっと早くできるということです。

足りないのは「勢い」です。

ブレーキングのエネルギーをどうやって横に向けるか

さあ、さらなるタイムアップがこの辺にありますね。

やり方は…少なくても加重ではなく、抜重がキーポイントでしょう。

 

そして、気が付くと普通のハングオンがスムーズにできていたりしませんか。

フォームも無理がなく自然になっていたり。

ライダーがマシンを腰回りで倒しこむ、まさしくハングオン的ですし。

 

おまけ

マルケスの走りがアグレッシブに見える理由

マルケスとペドロサのシートエンドには段差のある特製の2段シートが設けられています。

依然触れた、ストレートでの空気抵抗削減のためのお尻あげ目的とは思うのですが…

オンボードで見ると立ち上がりから直線、そして倒し込み、そして切り替えし、すべての場面で邪魔そうです。

時に切り返し時に動くお尻の動きは上下動を伴い、ロレンソと比較すると明らかに無駄なうえに反動もありそうです。

そもそも、往々にして切り返し時にはシートエンドストッパーは邪魔です。
特に、追い上げる時というか、いつもより伏せ気味に走ろうと思ったとたんになおさらです。

お尻(腰回り)部分に引っ掛かりがあると、実際タイミングがずれるのですごく荒れた走りになってしまうときがあります。

 

 

予選時とかのマルケスの暴れるマシンは、アグレッシブに振り回しているというよりは、思い通りのタイミングでライディングできていないことに起因していたりしそうです。

なぜなら、スムーズな走りのほうが速いことを知っていて、そのスムーズな走りを実際にやれるはずだからです。

ストレートスピードも大事だけど、スムーズなライディングの妨げになってしまうようではいけません。

きっと、2段シートは近々改良されたニューバージョンになると思われ。

 

では。

RR>切り返し

スペンサー乗り風

勝負の分かれ目

芸術的な切り返し

 

 

(例によって誤字脱字、表現の修正は都度修正していきます)

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