『MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニック』の読み方
- キース・コード的, メンタル, 二輪ネタ, 基礎
- アンディ イボット, キース・コード, ライディングテクニック, レーシングテクニック, 宮城光
MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニックの読み方
『Performance Riding Techniques The MotoGP Manual of Track Riding Skills 』
アンディ・イボット著作の『MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニック』という書籍を紹介します。
アンディ・イボットはレース経験のあるジャーナリストで、キース。コードの運営しているカリフォルニアスーパーバイクスクールで2005年のGP125チャンピオンのトーマス・ルティのアドバイザーとしても有名です。
その著者がMotoGPライダーの生の声とそのライディングテクニックについてについてまとめた『Performance Riding Techniques The MotoGP Manual of Track Riding Skills 』の日本語版として邦名『MotoGP パフォーマンス・ライディング・テクニック 究極レベルの技術を徹底解剖』が発行されました。
オリジナルは2006年初版ののち、2009年に第2版、2013年に第3版として内容がアップデートされたものが発行されています。
オリジナルの序文はキース・コードが寄稿しています。
内容はというと、さすがキース・コード門下生!
師匠と同じく豊富な知識と情報を詰め込みまくりすぎで、内容が濃いので読後の満足感は高いのですが、実際のライディングへ反映できるかというと微妙なところがありそうです。
文章的にはさすがジャーナリスト、解りやすく読みやすいのですが、ライダーのコメントを取り扱うためどうしてもとりとめもなくなってしまうのは否めません。
そんな中、用語を含め読める日本語にまとめあげた翻訳の西村氏、日本語監修の宮城氏の功績が光っています。
使用される用語(翻訳)に違和感がないのはもちろん、ハンドルバーが激しく降られる現象の「タンクスラッパー」とかハイサイドに対して、フロントゴケのことを「ローサイド」、侵入スライドのことを「バッキングイン」、タンクに貼るすべり止めを「ストンプパッド」などの向こうの言葉を紹介してくれてもいます。
しかし、単なるMotoGPの世界を垣間みせる読み物としてではなく、レーシングライダーとしてこれをマニュアルとするのには一工夫が必要です。
現役ライダーの生の声というのは非常に貴重な情報なので、これを生かすべく、役に立つように見直してみましょう。
しかし、オリジナルにあるManualという文字を邦題から除くあたりはさすが宮城氏。
2007年9月22日発売
因みに日本語版の発売日の9月22日には、MotoGP世界選手権の日本ラウンド予選がもてぎで行われており、宮城光氏をゲストに「世界最高峰MotoGPライディングテクニックの奥義」と題したアンディ・イボット氏による発売記念講演がホンダコレクションホールで行われたそうです。
決勝当日はウェットコンディションでバイクを乗り換えてよいフラッグトゥフラッグが初めて実施された日です。
折角ですのでレース結果も書いておきます。
ポールポジション
- MotoGP™クラス
- ダニ・ペドロサ Honda 1’45.864
- 250ccクラス
- 青山周平 Honda 1’51.327
- 125ccクラス
- マティア・パッシーニ Aprilia 1’57.301
決勝
- MotoGP™クラス
-
- 1位:ロリス・カピロッシ Ducati
- 2位:ランディ・ド・プニエ Kawasaki
- 3位:トニ・エリアス Honda
- 250ccクラス
-
- 1位:ミカ・カリオ KTM
- 2位:アンドレア・ドヴィツィオーゾ Honda
- 3位:エクトル・バルベラ Aprilia
- 125ccクラス
-
- 1位:マティア・パッシーニ Aprilia
- 2位:ガボール・タルマクシ Aprilia
- 3位:ヘクトル・ファウベル Aprilia
2007年のチャンピオン
- MotoGP™クラス
- ケーシー・ストーナー Ducati
- 250ccクラス
- ホルヘ・ロレンソ Aprilia
- 125ccクラス
- ガボール・タルマクシ Aprilia
評価と効果
ところで、キース・コードは名声も実績もあるようで、書籍もスクールもとても高い評価を得ているようなのですが、
ところがこと日本においてはあまり実績が伴っていないような気がします。
「おれはキース・コード様様のおかげで速くなれた」と公言しているライダーにお目にかかっていません。
このこと自体がキース・コードの苦悩であり、その後の試行錯誤の結果が書籍にも表れているように思えます。
キース・コードの四半世紀
日本語版は3冊。
この書籍販売の流れに合わせて、彼のこころもちを妄想してみました。(洋書はで正しく解釈できていないかもしれません)
- 『ハイスピードライディング』は「レースに勝つ(速くなる)ために必要な思考法を完璧にまとめたので、これで私と同じ考え方ができるようになれば、未来は明るいだろう!」という趣旨だったと思います。
ところがこの書籍は彼の思った通りにはならず、バイブルのような扱いになってしまいました。
彼の思惑ではこの書籍の中身を理解したらこれをベースにして、メキメキと成長するライダーが量産される。 と思ったと思います。
彼はキース・コードを超える人間(ライダー)がどんどん出てくると思ったのです。 - 真意を誰にもわかってもらえないので、「とりあえずサンプルを明示するのでこの通りすれば結果は出せる」という次元を大幅に下げた書籍が『ロードレースライディング』です。
この書籍も一人一冊なみの良書だったとおもうのですが、ところがこれも失敗に終わります。
彼にしてみればライディングに必要なチェック項目の一部を例として明示した程度だったのに(と思うのですが)、ライダーにとってはこれでも多すぎてほとんど活用されなかったように思います。
そもそもライダーそれぞれで必要なチェック項目は変わってくるので、不要なものまで明示されてしまったら面倒だと思ってしまうことでしょう。
「自分で考えられないようなので、代わりに書いてあげたら、それでも面倒くさがられた」感じです。 - 時は変わり、弟子の登場です。『MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニック』
さすが物書きが生業のジャーナリスト、たいへん楽しめる書籍になりました。
師匠よりもMotoGPに近い世界にいるのでとてもリアリティがあり、MotoGPの次元の高さを感じることができました。
テクニック的なことも触れているので、気分はGPライダーになれました。
ところが、この本はもはや大衆紙、役には立ちそうもありません。
読み物としての面白さに終始していてライダーがこの本でうまくなれるような仕組みにはなっていません。
なによりここで述べられているのは、すべてサブプロダクトだからです。
プロダクトを提示してない状態でのサブプロダクトを主張するのは、師の教えに反するはず…
ライダーのコメント主体だと仕方がないのかもしれませんが… - 師匠の書籍も、もはや「ライダーに伝わらないとしょうがない」とプロダクトの存在をあえて主張しない、読みやすい指南書に回を重ねるごとになって言ってるようです(洋書なので断言できません)。
- 弟子のほうは、MotoGPという現実味のある情報を扱っているので改訂版として、訂正と追加と最新のライダー情報をおこなった版を発行しているようです(洋書、未購入)。
これではキース・コードが世間に対して世間に与えた大きな功績とは裏腹に、キース・コード的には完全なる敗北ととるべきです。
これはキース・コードの伝えたかったことの一部分しか伝わっていないというよりは、彼が作り上げたメソッドでは世間を動かすことができなかったばかりか、皮肉なことに本来のメソッドと逆のアプローチを取ることで成功してしまうという、世の不条理とも言えるべき現象です。
繰り返しますが『ハイスピードライディング』は私(キース・コード)の追い抜き方を示した書籍です。
多分に『ハイスピードライディング』を発行した時点で、彼の頭の中では、それをベースにしてみんなでさらなる高みを見据えて行きましょう!というはずだったと思うのです。
それが、手取り足取り・・・
MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニックの読み方
本書の読み方には3種類あります。
MotoGPライダーを雲の上のお話と読むか、追いつくためのバイブルとするか、それとも追い抜けることを確信するためか です。
GPライダーの才能と努力はさておいて、見方によってはGPライダーの日ごろのアプローチにはまだまだ付け入る隙がありそうなことが読み取れるからです。
そしてもしも、GPライダーを追い抜こうと思うのでしたら、次のようにしてみましょう。
- 『MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニック』を熟読します。
- 詩織を貼るなり、要約を書き出すなどして内容を整理します。
- 整理したものを箇条書きにして、チェックリストにします。
- そのチェックリストの項目を必要度や腐葉土や重要度などでレベル分けします。
- それらの項目のプロダクトを見つけます。
- 見つけたプロダクトに対して練習なり習得なりします。
- プロダクトから得た情報でもう一度チェックリストを見直します
- チェックリストの情報を、正しい情報と、そうでもない情報と分けます
- そうでもない情報を視点を変えてプロダクトを見つけます
- そして6~9を繰り返し、サブプロダクトからプロダクトにたどり着けるようにします。
- 自分にとって必要なチェックリストを作る。
- 自分にとって必要なプロダクトをまとめる。
どうでしょうか?
本来なら出版順に読んだ方が手っ取り早いことでしょうが、手に入りにくいのでしかたがありません。
逆にさかのぼって自分で『ハイスピードライディング』を作り上げてしまいましょう。
ただのGPファンの方々もポストイットを要所要所に貼りまくるか、再販するつもりがないのでしたらマーキングしまくった方がよいでしょう。
あとから思いついた箇所を探そうと読み直しても、該当する箇所を見つけるのが大変だからです。
どれも面倒な方は、こう思って読み進めるとよいでしょう。
- 現役ライダーが(スパーテクニックなどを)こともなげに語っているときは、環境に恵まれていて、更に現状ではなくその上に視線が向いているということです(凄いことをやっていることに気が付いていないか、あるいはオレはもっとすごいとアピールしているかのどっちかです)。
- 反対に、引退ライダーが(昔のことを)こともなげに語っている場合は、それは自分のことを高く見てほしいと思っているかもしれません。
引退ライダーらが、自分を含めた周囲のライダーを正しく解析したり賞賛していたら、今までの恩(周囲のサポート)を返却(貢献)しようとしている立派なライダーだということです(ただしその場合は誇張されているので注意が必要です。いい例が宮城氏)。 - 文章のおわりが ~だ で終わっているときは、とりあえず間違っているかもしれないと疑ってかかりましょう(使えるテクニックには選択肢があります)。
- 凄い!と褒めたたえているテクニックがあったら、それをできるようにすることが、手っ取り早く速くなるコツでしょう(レースとは早い者勝ちだからです)。
そうやって読み直してみると、情報満載です。
手元に書籍を持っていない方々への情報です。
amazonの『MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニック』の中身検索で数ページ読めるのでチェックしておきましょう。
とくにサスペンション教育プログラム(サスペンション調整チェックリスト)の箇所は全ページ読めるのでせっかくなので見ておきましょう。
ぼやけて見えますが、実は拡大すれば綺麗に読めます。
※書籍の一部を引用し、ついでに機械翻訳しました ⇒ キース・コード的
昔は衝撃的だったし、未だにプロダクト的な思考法を勧めているテクニック本は出てきていないので価値はあると思うのですが、逆にその思考法はレーサーには受け入れられないのかもしれませんね。
それよりも、ここまでキース・コードにこだわらなくても国内で良い本が出てくれれば済むのです。
個人的には、片山敬済と福田照夫と歌山 利宏と辻司とかでタッグを組めばはるかに素晴らしい指南書が出来上がると思っています。
ウィック・ビジュアル・ビューロウ MotoGP パフォーマンス・ライディング・テクニック〜究極のレベルへ走りを高める技術〜 書籍・雑誌 ..
原著を見つけました。⬇️
Performance Riding Techniques The MotoGP Manual of Track Riding Skills –

Thomas Lüthi, 2005 125cc World Champion
以上
MotoGPパフォーマンス・ライディング・テクニックの読み方
でした



















