マシンセッティングの出させ方 (マーベリック法)
マシンセッティングの出させ方
サスセッティングの前途多難さ
前回何気なくHRCのセッティングのページを紹介しましたが
そこで、サスペンションメンテナンス方法⇒通常セッティング⇒マシンバランスのセッティングの項目で
開口一番で「SPGレートを決める」とあります。
・・・HRCにしても何かが欠けています
というよりすべてが欠けています。
情報公開されていなかった数十年前よりはましですが、これもおそろしく役に立ちません。
まだまだ前途多難です。
なぜなら、SPGレートを特定できる時点でセッティングはほぼ完成しているであろうからです。
最初にではなく「ゴールまでたどり着いて初めてSPGレートを決めることができる」のほうが正しいと思われるからです。
HRCがそんなこともわかっていない、のではなく、そうとしか書けない事情があります。
それは、世間では、いまだに「セッティングはスプリングありき」といっても通じないからです。
実際にいじれる「ダンパーありき」勢力に対し論破できていない実情があるからです。
ダンパーは調味料で、スプリングがメインディッシュにもかかわらず。
見えないビフテキ?よりも目の前の人参を好むのが世間だからです。
ということで、オンロードでのサスセッティングを考える場合、どうやってSPGレートを決めていくか?を考えるのがセッティングの正しい道筋になったりもしそうですがそれはまた。
そういった意味でのレプソロホンダ
前戦での転倒原因についてなんか不思議風に書かれていますが、
バンキング途中に特に大きなアクションもなくスリップダウンする場合はトラクション不足が大抵原因です。
トラクション過多はライダーが認識できるからです。
で、トラクション不足はスプリングよりも圧倒的にダンパーの設定が原因となります。
もう一つの要因としてライダーのライディングによるトラクション不足というのがあります。
これは例えばウェットからドライに変わるときとか、リードを稼げて余裕シャクシャクの時とか、有り余るテクニックで適当にバンキングさせた時です。
これはマルケスに当てはまったとしてもペドロサには当てはまらないので今回の原因ではないと考えるのが妥当でしょう。
ということでトラクション不足という結果ではなく、ダンパーの不適切な設定の結果からトラクション不足になってしまった原因のほうに注目するほうが前向きです。
ダンパー設定と簡単にいっていますが、ダンパー設定といった場合スプリング関連以外のすべてのパーツがその構成パーツだったりします。
まあスピードあるいは時間によってその減衰力が変化する動的なパーツだということにでもしておきましょう。
そのダンパー設定ですが、ジオメトリー的に最適にセッティングされているマシンに対しては、すべての場面を考慮して有効に設定される項目といえます。
が、セッティングが出ていない時には、セッティングが出ていないことの埋め合わせに使われたり、あるいは重大なデメリットに気が付かないことがありえます。
正しくジオメトリーを設定できていないのにもかかわらずタイムを出さないといけないからとりあえずの姿勢制御をダンパーで設定してしまったが今回はそれが原因で転倒してしまった、ととるべきです。この場合のダンパー設定はもちろん固目すぎだったということです。
セッティングが出ていれば思わぬ転倒というものが存在しなくなるということです。
そして、思わぬ転倒をするのであればそれはセッティングが出ていないということで、
セッティングが出ていないということはたいていの場合コーナリングにマージンはなく、ブレーキングで稼ぐことになり、結果ハードタイヤを使うしかなくて・・・
さらにセッティングが出ていないということは一般にタイヤの消耗も早くなるともいえるのでまたまたハードがほしくなり・・・
そして持ち前の権力でセッティングが出ていないマシンでも勝てるタイヤを要求するという暴挙に。
これは、早急に結果を要求する外野の影響ともいえる症状だったりします。
ライダーのせいでも特徴でもなかったりするということです。
マシンセッティングの出させ方
話はマシンセッティングの出し方にもどります。
前回同様に具体的に設定変更をすることではなく取り組み方という見地のはなしです。
前回の話では、結局イケイケのマーベリックが正しいセッティングの出し方となってしまいました。
(ロッシの方法はリスクが伴うので次点です)
ということでマーベリック法を学びましょう※。
このようにやりましょうという方法ではなく、もはやこのようにやれという法(おふれ)です※。
※マーベリック:マーベリック・ビニャーレス・ルイス ( Maverick Viñales Ruiz, 1995年1月12日 ~)
※セフレ、ソフレ、オフレのことではなくて御布令的なことです
マーベリック法
過ちを正す、過去の遺産を捨て去る
まずは今までよりも、より良くなりたいのであれば今までを過信しないことから始めないといけません。
具体的には次のような妄想から脱却することです。
- セッティングは俺様が出す
- セッティングは我チーム様が出す
競争すべきは結果的なリザルトであって、個々の報酬ではないということですね。
最終的にスポンサーが喜ぶことが重要だということです(もちろん観客が喜ぶことも含まれます)。
もっともらしい方法ではなく、結果を出す方法を選択すべきということです
このことについての究極は現在・過去・未来のしがらみがないということが一番ということです。
自身のいる環境が、「大したことない」と思える、言い切れるということもこれに含まれます。
ここでは「苦節何年」な方々はそのままではNGということです。
セッティングは出すものではなく出させる
マーベリック法の基本は「セッティングは出すものではなく出させる」です。
先に述べた通り俺様が主役ではありません。
主役は誰か他のものです。
このことの意図するのは、誰の成果かわからないぐらいのほうが良いうということです。
目的は「気が付いたら出ていた」です。
どういうことかというと、必ずしも即時性を求めないということです。
「豊富な知識と経験により即断することは格好いいい」からの脱却です。
自分にもスタッフにも、そして時代にも猶予を与えるということです。
その方がよい結果になると思われるからです。
つまりその場のリソースでセッティングを出すのではなく、時間差を置いて誰かにそのセッティング出しを譲るということです。
自分で立ちはなく、未来の誰かに出させてあげるようにするということです。
これは、結論を出すのに適切な時間をかけるということでありますが、そもそもレースの場合いつまでにその結果が出ればよいか?というのも重要項目です。思いついた、発生した順にかたずけることが必ずしも効率がよいとも言えず、そもそも不要になる場合もあるし、そもそも答えが天から降ってくることは多々あるし、他の関係者の意見(背景)も取り入れることができるし、ということです。そしてみんなで寄ってたかって次元を高めるのです。
ライディングは常にベストで
「セッティング項目に注目して走る」というライディングを捨て去ることです。
なぜなら、走りが一定しないからです。
「セッティングは全体を一気にではなく一点に注目して一つ一つ」なんてのもありますがそれもすてさります。
そもそもセッティング項目というのは、常に複数というか「常にすべて」だったりするので、一つ一つクリアするというもっともらしい手法をとられがちですが、それはスタッフの採るべき手法でライダーのそれではありません。
ライダーのとるべきは「天性の感覚に頼る」です。
「どこが優れているのかよくわからないけどトータル俺様はトップライダー」なことを優先します。
大抵の場合本人はそのポジションにふさわしい理由と、そのポジションを保つことができる手法を完全に理解しているとは思えません。
大抵の場合、たとえば学力が世界チャンピオンにふさわしい とは言えないのが実情。
そのような中で「もっともらしいマシンの状態を伝えるフレーズ」を考えながら走っているライダーは脳力・能力の無駄遣いにより本来の役割を発揮できていない可能性が高まります。。
情報は垂れ流す
先の通り「ライダーの感性は重要だが、できれば学力フィルターは通したくない」ということです。
そもそも試行錯誤が必要な場面で正しい指摘なんてのは期待できません。
本人の思う解決法とか原因とは別のところにあるかもしれない事柄の情報も収集することが重要です。
垂れ流し続けることは、思い入れや、個人の特徴などからの脱却にもつながります。
また思いがけない素敵なフレーズが出てくることも多々あります。
データロガーは頼らない
データに自分の感覚をそろえる必要はありません。
もしそろえる必要があるようであったら、ライダーの地位が下がっているということです。
現状でのライダーとマシンのセッティング的配分では、データから導いた理想的であろう結果をライダーにとってどう感じるかということが重要であることを忘れてはいけないでしょう。
結果は求めない
セッティングを変更したからって、その期待される効果が改善されるとも限らないし、そもそも別のところに影響が出てしまうのがマシンセッティングでもあるので、さも、そのセッティング変更によってどこどこがよくなっって、どこどこが悪くなった、みたいのを無理やりにねつ造することを避けられます。
その状態になれる
いわゆる走り込みを行うことで、マイナス面だと思った点が気にならなくなったり、逆に強みとして生かせたりすることは多々あるからです。
例えば初めて出くわす違和感に対しては敏感だったりしますが、いったん慣れてしまえば大したことはないということです。
例えば人体パーツはそれぞれわがままで、いきなり衝撃を与えると「痛い」と神経が文句を言いますが、事前に宣言しておけば同じ痛さなのに「イタクナイモン」とやせ我慢をしたりするのと同じことです。
神経の発する痛さは、損傷の度合いだけではなく、注意喚起の度合いでもあったりするからです。
そして重要なことは、どこから攻められるかわからない状態での反応速度は、著しく遅いということがあります。
殴られて数秒してから痛いと反応するのと、殴られる前に痛がったり正しく準備するのとでは、その差は歴然です。
気にしないで楽しむ
そのセッティングで速く走ることを楽しむことです。
今まで述べた通り、意識して走ることが最大限の効果を発揮するとは限らないし、それは自分の器と異なることもあるし、そもそも、即時に解決しなければならないプレッシャーもありません。
その結果がセッティングが進まないとか、セッティング能力がないとか、セッティングライダーとして使えないとかの外部評価をあまり優先しないことです
ライディングを固定する必要もないし、本番中には試せないことも、ここで試してしまいます。
走り方を変えるなと、先ほど反対の意見もありましたが、セッティングは、複数の理想や複数の制限の折り合いを見つけることです。反対方向があるからセッティングです。そしてもちろんライディングはセッティングの一部です。
みんなでマーベリック
ということで、みんなでマーベリック法して好結果をのこしましょう。
正しく実践すれば、当の本人は恐れるに足りません。
たいした奴じゃあありません。
言うまでもありませんが、マーベリック法はライダーが実践するのではなくスタッフが実践させる手段です。
これも即時性を求めてはいけません。
イケイケな環境はいきなり生まれません。
ドカやスズキがたまたまマーベリックだったとしても、他のチームがその機を逃したとしていたとしても、ライダーの輸入以外にも、環境を作る方法は山のようにあるので簡単にあきらめてもいけません。
言うまでもありませんが、このサイトの発言の根拠はいい加減です。
スポーツ観戦におけるヤジ程度のことで悪意はありません。


















