リヤーが滑るので柔らかくしたらグリップが上がる時
リヤーが滑るので柔らかくしたらグリップが上がる時
では改めて「リヤーが滑るので柔らかくしたらグリップが上がる現象」というのがどういうことか検証してみましょう。
前提ですが、ここでいうリヤを柔らかくというのはリヤサスペンションのダンパーに限ってのこととします。
上等なサスには高速と低速を別々に設定できるそうですがとりあえず一様に変更したとします。
そしてストレートではなく一連のコーナリング中の出来事に限定しての状態についてとします。
圧側ダンパーを柔らかくした時の現象
効果は後述するとして現象としては次のような物があるでしょう。
- バンキング時の姿勢収束が早い
- アクセルオン時の姿勢変化が大きい
一般的にはこれだけです。
これだけでは、リアのグリップが上がったとわざわざいうことにはつながりません、というか別の表現をするでしょう
ということは、これとは別の視点で見る必要があります。もっと詳しく検証しましょう。
まず、この曖昧な表現はとりいそぎ次のようなものとします。
「リアが滑るのでリアスプリングの圧側ダンパーを緩めたたらトラクションが上がって滑らなくなった」と本人が言った。
これはリアが滑るような場面に限定されるセッティングノウハウということになります。
そして、ライダーがそう感じたというのがキーポイントのようです。
オートバイにおけるリアサスペンションの位置付け
オートバイのリアサスペンションを考える時に、簡単に忘れ去られてしまうのが「リアサスペンションの両端は固定されていない」ということです。
一端はスイングアーム経由の回転するタイヤと地面。
もう一端は、フレーム経由のシートラバーとか脊髄とか・・・。
地面が例えば平坦で固定(動かない)だとすると、シートレール(フレーム、マシン)は上下動みたいなことが行われます。
またタイヤはエアサスとゴムサスなのはもちろん全ての重量物や抵抗物はサスペンションと言えます。
そしてそれぞれが固有の反力やら周期やらストロークスピードやらがあるわけです。
例えば圧側ダンパーを緩めるということは相対的に見たサスペンションを境に見たバネ下が軽くなるのと同等の効果を持つ時があります。
それが何を意味するかというとタイヤのピーク的な負荷が減るかもしれないということです。
場合によってはトラクションが下がるということです。
ただしそれはタイヤとサスとマシンとの相関で効果が出たり無視できる範囲だったり。
例えば同爆にすることでトラクションが上がったところにダンパーを緩めるのは逆効果になる、と言うようなことです。
一般にサスペンションを取り払ったリジットの方がトラクションが上がるという話もありますが、それは路面がフラットな場合で結局ただの机上でしかありません。そんなことはないと思うかもしれませんがそれはタイヤがサスペンションなことを忘れているからです。
ということで、
リアサスペンションの設定を変えるということは、リアサスペンションに限らず、関連する全てのサスに影響を及ぼす。
ということです。
タイヤ面では凸面でトラクションがキープされ、凹面で不利になる。というようなことです。
そしてもう一つの側、
こいつがなかなか不条理です。
いうことを聞いてくれないしわがままだし、理解もしてくれない。
ということで圧側を緩めることの最大の効果はこれかもしれません。
時間的余裕のないライダー
赤ん坊が寝ると重くなる、なんてことを言うまでもなくライダーはバランサーだったりサスペンションだったりします。
特徴的には、長い目で見ると、常にバイクの上にしかいないので、継続的な加速度やスプリング的な動作の周期を長くすることをしにくいと言うえます。
その結果長時間にわたる加圧(加重)を行うことができません。
そして、肝心のライダーは、そういった認識はなく、なんでも思い通りになると思っていたりします。
となると、加圧をしたい時には短時間でその目的に答えてくれるマシンを応答が良いと言うインプレになるのではないでしょうか。
そしてここでくだんのリアサス。
圧側を緩めるとリアサスがボトムする傾向になると言えるでしょう。
(だから姿勢制御に使えると言う意見もあります)
この特性はライダーにとって好都合です
そもそも圧側を柔らかくすることで反応していることが実感しやすく圧倒的にコントロールできてる感が強まります。
そして繰り返しの加圧が加圧方向に進む傾向にあるので、段階的な加圧でも目的を果たすことができたりします。
例えばリア周りを鎮めたいだけ沈めることができます。
ポンピングできると言うことです。
これが逆のセッティングでは加圧すると逆に伸び上がってしまうかもしれないのです。
サスペンションセッションは不協和音
と言うことでサスペンションのセッティングで重要なことは周期があること、相手がいること、時間軸が存在することなど複数のパラメーターをの合成であり、まるで音声信号のようですが、この信号が長い目で見てフラットで短めで見ると不協和音な状態が良いセッティングと言えるかもしれません。
それに加えライダーは加速し続けることが難しいため、感性や加圧に関しては実感と現実を区別して考えると良かったり。
例えばビックバイクの切り返しが重いのは、自分だけ早く動こうとしていたり、できない加圧をしようとしていたりするからだったりします。
と言うことで、
「リアタイヤが滑るのでライディングテクニックでリア荷重させるために圧側を緩め流セッティングを施した」
これだと、肝心のリア荷重はライダーが行うので、セッティングではなくライディングですね。
「リアが滑るのでリア荷重になるようなライディングをしてもその効果が出ないのでリアの圧側を緩めたら思い通りになった」
これですかね。
物理的なライダー不在なサスペンションセッティングではなく、ライダーがライディングしやすくするためのセッティングみたいな意味だと解釈すると納得です。
それとは別の意味でのセッティング
ライディングではなく(ライダー不在な)セッティングとして圧側を緩めるとグリップが上がる場面については、
かなり裏腹で表裏一体な感じですが、セッティングはライディングの道具よりも本来の地面とのトラクションのためのセッティンの方が最終的には高次元な走りになるのではと思います。
最終的にはセッティングはマシンに合わせて、ライダーはそのマシンに合わせる方が高次元だと思います。
ライダーが一番やってはいけないことは間違った解釈や、遠回り。
より場面を特定して、傾向を把握できるようになるとより強いライダーになれると思います。
その説明は、またの機会に。
【ジムカーナ向けセッティング】
ところで、これはサスなんてどうでもいい!と言う勢いのジムカーナー向けのセッティングには使えます。
簡単に言うと、
「イニシャルはかけたくないけどサスを硬くしたいとか、車高を低くしたい」時に使えます。
その際に今回のセッティングの出番です。
ジムカーナの場合、小刻みにライダーがチャタリングしたりウォブルしてトラクションかけたりしますよね?
やったぶんだけリアが沈み気味でトラクションかけても良さそうな雰囲気になることでしょう。
リアサスのストロークを長くするのには異論があるかと思いますが、その対策にも使えます。
例えば圧側のダンパーが硬いのは確実にロスタイムになります。
かといって柔らかいダンパーではお釣りがきて収束しないとコーナリングが安定しなくなります。
そんな時に圧と伸を思いっきりアンバランスにさせて効果的に収束させると言う技が使えます。
これで、倒し込み時にリアが上がっていてクイックに切れ込んで、リアの沈み込む勢いでリアブレーキ兼リアステアができて、さらに姿勢は安定して低い。
と三拍子揃ったセッティングの出来上がり。




















