タイヤの空気圧でセッティング
違いの分かる男
微妙なセッティングの違いがわかる場面には2種類あったりします。
行なったセッティング変更がドンピシャな時と、そもそもセッティング(ジオメトリー)が大きく適正な状態から外れている時とあります。
この、そもそも外れている時に対してのそのセッティング変更は決勝前の応急対策としてはありだとしても、セッティング出しの時には役に立ちません。
そればかりか返って間違った知識(情報)を信じこんでしまいかねません。
悪いことに、根本対策ではなく付刃と分かってやるのではなく、その変更が正しいと思って行なった場合は間違いだとは気が付きにくいものです。
ペドロサが1mmのセッティング変更の違いがわかる、といった場合には、そもそも各パーツの役割が分かっていて、なおかつ、そのセッティングの違いがわかる場面でニュートラルな状態を知っているか、実際にニュートラルになっている場合の時にいえる言葉です。
そこまでの自信がない時には、過信をすること無く、なるべく多くの周辺情報と共に記録しておくようにしましょう。
そして、念のため、他のセッティングパーツも変更するなどして、立体的な情報になるようにしていきましょう。
そうしておくと、ある時その情報が花開く時があるかも知れません。
二輪の場合は、まだまだセンサーではなく、ライダーの感性が主役が続くことでしょう。
しっかりとセッティング能力、あるいは状況を伝えられるようにしておきましょう。
センサーといえば、ステアリングダンパーにセンサーが装着できたらマシンの状態がわかりやすいかと思います。
タイヤの空気圧を変更するということ
ひとたび、セッティングのためとか、乗り心地のためとかに、タイヤの空気圧を変更するためには、最初に一仕事必要です。
世の中に用意されていない自分なりの測定方法を用意する必要があるということです。
通常のタイヤの指定空気圧とは冷間時に測定した時の値です。
冷間時と言っても外気の気温のことなので、同条件下で測定した時に比べると、夏は低め、冬は高めになってしまうことになります。
夏冬の空気圧で言えば、できれば逆にしたいくらいですね。
このそもそも、あやふやな測定値を信用しないことと、冷間時だけではなくいつでも空気圧を調整できるようにします。
自身の環境で設定しやすい温度の中でまずは基準温度を決め、その温度で測定した温度を基準空気圧とします。
そしてその基準温度とは異なる気温の時にも空気圧を測り、各空気圧の差の傾向を収集していきます。
そして走行直後のタイヤの温度を測定できるようにセンサー付きの温度計を用意します。
自分専用のデータなので同じ製品を使い続ける限り、誤差や精度は問題では無いでしょう。
できれば生産終了にならない製品の中で安価のもので十分でしょう。
測定方法も、例えばウエスでセンサーをタイヤに押し付けて測定した値とか、自分のやりやすい方法で良いでしょう。
これで、いつでもどこでも希望する空気圧に設定することができるようになります。
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フロント周りのセッティングパーツ
まずはフロントタイヤに限ってのお話とさせていただきます。
通常タイヤの空気圧は、前後セット同時に変更しなければいけないようなイメージが有りますが、今回は無視しましょう。
セッティングは同時に複数変更はしないものですし。
フロント周りのセッティングパーツ(の一部)を列挙してみます。
- タイヤのコンパウンド
- タイヤの剛性
- タイヤの形状
- タイヤの直径
- タイヤの空気
- タイヤの変形
- タイヤの接地面の形状
- タイヤの路面抵抗
- タイヤと路面の速度差
- タイヤの表面温度
- タイヤ内部の体積
- フロントフォークのスプリング
- フロントフォークのスプリングイニシャル
- フロントフォークのオイルダンパー
- フロントフォークの空気の体積(オイルの油面高さ)
- フロントフォークの空気圧
- フロントフォークのキャスター角
- フロントフォークのオフセット
- ステアリング(そのもの)
- ステアリングダンパー
- 腕
- 荷重
- 加重
- 慣性(ピッチング・ヨーイング・Gとか)
- 空気抵抗
- ブレーキ
- ジャイロ効果
- その多数
などなどです。
見逃しがちですが、ステアリングが切れるということは立派な緩衝行為です。
これらのパーツを駆使してセッティングを行っていきましょう。
もちろん意味を正しく理解することがより効果的な事は言うまでもありません・
※サイト全体がそうですが、あまり正確な用語や、事実を反映していない場合があります。
今回の場合で、より正しい知識を得たい場合はこの研究論文などを読まれるとよいでしょう。
車両運動解析用タイヤモデルに関する研究
正しい知識と、そうでもない知識、両方を比較することはとても効率の良い学習方法だと思いますので…
サスペンションとしてのタイヤ
多分、フロントタイヤのサスペンション機能とまったく同じ役割や効果のパーツは他にはありません。
そして、特徴も傾向も対策も異なるでしょう。
なので、「タイヤの空気圧を変えるのではなく、サスの他のパーツで補えれる」という意見は、一旦無視します。
タイヤのセッティングというとタイヤ自体を交換することと、件の空気圧を変えるぐらいしか思い浮かばないにしても、実際には、実に様々な要素が絡んできます。
どこをどうしたいかを正しく認識して、テーマがぶれないようにしておかないと泥沼化してしまいます。
セッティング要因ではなくサスペンションとしてみた場合スプリング的なタイヤの構造や材質と、エアサス的な空気圧があります。
タイヤの構造や材質はタイヤ―メーカーが用意したものをそのまま使うとして、空気圧は手軽に変更できます。
その空気圧を変えるということはどういう効果があるかというと…
まず一番大きいのが「世間的に流通している主観的な妄想に悩まされる」ことです。
それは世間に流通している悪意ある次のようなフレーズたちです。
「空気圧を減らすと腰が砕ける」は余計なお世話
この「空気圧を減らすと腰が砕ける」は空気圧を減らした時の特徴として実際によく聞くフレーズだと思います。
このフレーズの成立条件と、発せられた事による迷惑度を考えてみましょう。
「空気圧を減らすと腰が砕ける」が成り立つ時
例えば、テストライダーが実際にテストした結果、「空気圧を減らすと腰が砕ける」と感想を発したとしましょう。
(測定装置でも同様です)
その言葉に何の意味があり、それだどれほど実用的な事実かを考えてみましょう。
この「腰が砕ける」とは空気圧の変更前と比較しての特徴のことだと思います。
(空気圧以外は変更していないということですね。)
問題はその「空気圧の変更前」の状態です。
その変更前の状態の「完成度」はどのくらいなのでしょうか?
テストライダーは単純に変更後の違いを述べているだけで罪はないにしても、実際にこの言葉が使われるときには、この変更前の状態が「さも完璧」のような前提になってしまいます。
そもそも、セッティングとは「現状が気に入っていないか、現状が正しいか確認する」為のアクションでしょう。
そもそも「現状」を完璧だとは一片たりとは思っていないか、あるいは完璧かどうかを確認するためのアクションです。
なので「現状」の地位は確定はしていないのです。
これが意味することは、テストを行なった関係者やタイヤメーカーの思惑が大きく作用しているということです。
「指定空気圧より空気圧を減らすと乗りやすくなる」とはメーカーとしてイメージが悪いのでいえないということですね。
このような表現が使われると言うことは、質問者へのアドバイス(回答)ではなく、そのアドバイスの客観的なイメージのほうが重要ということです。
まあ、苦労して決めたであろう標準値ですからね。
そうでなかったら、(メーカー推奨の)現状が気に入らないので空気圧を下げるとどうなるか、という(失礼な)質問の回答としては、「砕けた感じになる」以外にも沢山の特徴があり、その特徴を(その特徴は表現が難しいとしても)関係者だからこそいえる豊富な知見・実績の中から、質問者に役に立つ「ドンピシャな表現」をアドバイスすることはできるはずですから。
「空気圧を減らすと腰が砕ける」の有効範囲
一歩譲って、変更前が完璧だったとして、その表現(腰砕け)がその通りだったとして、それがあなた(ライダー)にとってまさしくその通りの時とは、どの場面だと思いますか?
ライダーが標準体重で標準乗り?をしていたとしてです。
それが成り立つのは次のような場面です。
- 直線を加速するでもなく減速するでもなくスムーズに走っている時
この場面で、腰砕けを感じるとしたらさらに次の場面
- 悪路を加速するでもなく減速するでもなくスムーズに走っている時
- 縁石を加速するでもなく減速するでもなくスムーズに乗り上げた時
これ以外の場面では「空気圧を減らすと腰が砕ける」が正しくない、あるいは表現が正しくないことを次項で説明します。
「空気圧を減らす」の物理的変化
タイヤの空気圧を現状の空気圧より低めに調整した時の物理的な違いは何だと思いますか?
「空気圧を減らすとタイヤが柔らかくなる」は間違い
タイヤの空気圧の変更は、フロントサス(フロントフォーク)の機能で言うと、フォーク内の空気体積、その空気の内圧にあたりますね。
しかし、それよりもスプリングと、そのスプリングのイニシャルに例えたほうがその特徴はわかりやすいと思います。
フロントサスにおいてイニシャルは「想定した力が加わるまでフロントフォークが作動しないようにする」のが役目です。
したがってイニシャルは「想定した力が加わっている間」はなにも動作に影響を及ぼしていません。
言い換えるとイニシャル調整は「想定した力が加わっている間」の「スプリングと他のパーツとの位置関係をシフトさせる」為の調整となります。
イニシャルの正しい調整理由はサスの長さのコントロールよりも、他のダンパーとかの位置関係の調整のために行うとより効果的です。
イニシャルはスプリングの設定や車勢の調整ではなく「加わっている力とダンパー」の調整が正しい役目と言えます。
タイヤの空気圧はそれで言うと「タイヤの撓み量」の調整といえるでしょう。
したがって通常の場面では走行中の内圧は変更前と変わりません。※
したがって「空気圧を低くするとタイヤは柔らかくなる」は正しくありません。
停車時に手などで押した時には柔らかく感じたとしても、走行時には硬さは同じといえるでしょう。
※厳密に言うと、タイヤの剛性が高い場合内圧はその分低くなります。
また、たわませるまでの時間差の影響をうけることもあります。
さらに、体積が減る事による「扁平率を高めたタイヤ」と同等の特徴を持つとも言えます
タイヤメーカーの指定したい値とは
ということで、空気圧ってあまり意味が無いことがお分かりいただけたと思います。
タイヤメーカーが最適な状態と判断した時の具体的な測定できる値は「タイヤのたわみ」の量が正しいといえるでしょう。
その値をコントロールするのが空気の圧力なわけで、適正なたわみ量になれば、静止時の空気圧なんかにこだわる必要がないことがお分かりいただけるでしょう。
タイヤメーカーがその最適なたわみ量の情報を公開してくれると色々幸せになれます。
正しいセッティングのアプローチ
タイヤの撓み量は同時に、接地面の面積なり、縦横の形状と同義といえます。
言い換えるとたわみ量の計測は地面とフロントアクセルまでの距離でも、タイヤの地面との接地面の前後長でも計測できるということです。
例えば、マルケスがレコードラップで走行した時のタイヤの撓み量がタイヤのベストといえると思います(とりあえず)。
その時のタイヤの特徴とか具合とかは、同じたわみ量にしないと再現できないと言えます(もちろん同じタイヤで同じ条件の時ですが…)。
もしも同じ条件で同じコーナーのたわみ量が足りなかったら、暫定的にでも「同じたわみ量になるまで空気圧を増減する」のは正しい手法といえるでしょう。
もしもメーカーの想定しているベストのたわみ量と異なっている場合は、両方が目標値です。
そのたわみ量で旨く走れるように、タイヤ以外のセッティングパーツを最適な上体に仕上げていく方がスムーズな手法といえると思います。
その手法では、一旦空気圧を下げたとしても、タイムアップとともにメーカー指定の空気圧に近づいていくことになると思います。
それでは無く、同じタイヤを使用しててベストな走りをしているライダーの、そのたわみ量が分かったとして、
「指定空気圧でそのたわみ量になるまで頑張る」
というアプローチは正しいとお思いでしょうか?
その参考にしたマシン(ライダー)のその時の空気圧さえ知らずに…
(やはり、説明が長くなってしまうので、今回のこのネタはこのくらいにさせてください。また気が向いたら追記します)
青木三兄弟とセッティング

祝スズキの予選1-2独占 第7戦カタルーニャGPの公式予選は13日、バルセロナ‐カタルーニャ・サーキットで行われ、ランク11位のアレイシ・エスパルガロが週末2度目、今季4度目のトップタイムをマーク。昨年6月の第8戦TTアッセン(ウェットコンディション)以来キャリア2度目のポールポジションを奪取して、今季復帰したスズキに2007年6月の第9戦TTアッセン(クリス・バーミューレン)以来となるトップグリッドをもたらした。 (MotoGP.com)
レース=セッティング 的に斬っても切れない感のある中、青木三兄弟のデビュー当時のインパクトは強烈でしたね。
なんとノービス時代は3人ともファイナルもサスセッティングもほとんど変更なし(練習もなし)のまま各サーキットのレースに参戦し勝ち続けていました。逆にこれが一番効率よくセッティングを知ることにつながったりして。
では





















