ステアリングダンパーの功罪 RR > セッティング
レーシングマシンには欠かせないステアリングダンパーですが、使い方を誤ると手痛いしっぺ返しが待っています。
ステアリングダンパーはクイックなステアリングや、フレームのゆがみ等に起因する、共振防止や、ウイリーした後のフロントタイヤ接地時などのキックバック抑制のために生み出されました。
ステアリングの回転にフリクションを持たせることで、回転そのものを抑えたり、時間差を持たせることで、共振や転倒を抑えようという目論見です。
仕組みはともかく制御量を調節(ダンパー)して、操作性と安全性を測りにかかけて最適値に設定されていきます。
そのダンパー効果を「クイックな倒しこみ」のセッティングに見積もってしまうと、思わぬところで裏切られることになるというお話です。
(電子制御のダンパーを知らないので従来のステアリングダンパーのお話となります。)
ステアリングダンパーの功罪 RR > セッティング
安全対策ではなく、セッティングパーツとしてステアリングダンパーを見た場合、
そのダンパー量(減衰係数)を増やす事でターンイン時のバンク角速度が速くなる傾向があります。
これは、フロントタイヤの追随、回頭、切れ込みが遅れるからにほかなりません。
本来自律操舵しているオートバイの、バランスを崩してコーナリングの体勢に持ち込むのだからこれは正しい作法だとしても、
その、ダンパー量は適切でしょうか?ってことです。
よしんば、そこそこセッティングできていたとしてもその状況が変わった時を考えてみましょう。
ダンパーが効いていても切れ込もうとするぐらいオーバーなセティイングの中、
切れ込まないことでアンダーで始まり、落ち着いたところでオーバーになる。
それを嫌い落ちついた時にオーバーにならないようなセッティングを施したとしても、
とにかく時差を伴った余計なアクションが発生してしまう危険がありそうです。
予選中でも、決勝中でも、そのセッティングを出した時よりも、
より良いライディングが出来てしまった時、タイミングがピッタリ合って、「今までよりも完璧な倒しこみが出来た時」、
あるいは決勝中に、追い上げられたり、追い上げるために、「さらなるペースアップが出来てしまった時」、
この時にもフロントタイヤの回頭速度は以前と同じなわけです。
「キマッタ」と思えるバンキングがそのままスリップダウンです。
これは本来なら次なる次元への入口なはずなのに……
逆に、振り出しに戻る、かそれ以下なのです。
そもそも、スライド加減や、ブレーキ加減やその他いろいろ、毎回同じとはとても思えない中、ダンパーだけは一定です。
これに起因する転倒シーンが思い浮かびませんか?
ターンインのタイミングからステアリングダンパーの仕事が一段落した頃に「スコッ」ってやつ。
(と言いつつ、調度よい映像は見つけられませんでした。)
構造的には、油圧を利用したピストン式とローターリー式、そしてメカニカルなフリクションを利用した3つの方式に大別できます。
しかし、主に、想定外のアクションへの安全対策となるので、開発優先度が低いのか
電子制御されたものは、なんと2004年のHESDが世界初だそうでRS211Vの流用だそうです。
http://www.honda.co.jp/factbook/motor/cbr1000rr/200404/019.html

小型・軽量の電子制御方式の油圧ステアリングダンパー、HESD(Honda Electronic Steering Damper)。車速と加速度をセンサーが感知してECUでダンパーの減衰特性を制御することで、低速走行時には軽快な取りまわしを可能とし、高速走行時では路面からの外乱を抑え、安心感の高いハンドリングを実現する。
往々にして制御装置と言うものは、その目的以外の時にも作動してしまうと邪魔者どころか悪者になってしまうことがあります。
だからといって、背に腹は変えられ無いときは、だましだましその制御装置を使うことになります。
制御の度合いを加減したり、欠点に対処したり、逆に欠点を利用したりしてなんとか使いこなします。
そして結果的に時間的に速く走れれば結果オーライとなります。
電子制御の登場でやっと、必要なときだけ制御することが実現できるようになりました。
ところが今度は、旧来のスアリングダンパーに慣れ親しんでしまった、マシン設計と、ライダー、いきなり理想的な設定ににしたらそれはそれで弊害が……
今一度ELFを……

じゃあ、どうしましょう? は又の機会に。
お急ぎの方はHRCホンダのセッティングのクイックセッティン グチャートを参考にしてみてください。
以上
ステアリングダンパーの功罪 RR > セッティング
でした。
次回は、ステアリングダンパーと関連して、「コーナリング中の当て舵」の正しい解釈について触れます。
ステアリングダンパーを、手でハンドルを切れないくらい硬くしても普通に走れてしまう、ことと合わせて説明します。















