最近のヘッドフォンはブランドが一目でわかるようデザインされています。
このことは、アスリートにとって弊害があります。
それは人目に触れる場所での使用が制限されることがある、ということを意味しているからです。
楽器メーカーのヤマハ株式会社がオートバイメーカーのヤマハ発動機の2014年のオフィシャルスポンサーに2014年の5月2日からなりました。
ご存知のようにヤマハ株式会社とヤマハ発動機は別会社です。
NFLのBOSEの例のように、ヤマハ株式会社が冠スポンサーになり、他社製ヘッドフォン着用禁止令が発令されるようなことはないと思われますが、焦点はそこではありません※1。
そもそも、ライダーおよびチームは、スポンサードされていないブランドの、メディア露出は控えるべきだからです。

ホンダ系は目立つヘッドフォンを装着できない
耳栓をしているときにはそのままヘッドフォンをかぶせてしまうと通信(会話)しやすいんですが……
ヤマハのロレンソにしても、ホンダに移籍したら、ヘッドホンを利用した精神集中は行えなくなります。
試合前に音楽を聴いて集中させることが、儀式化やジンクス化していると、ある日を境にデメリットになってしまうことがあるということです。

Aleix Espargaro, NGM Forward Racing, QAT RAC
本題です。
トレーニングに有効なツールが、肝心のレースへの妨げになっていないか改めて自問をしてみましょう。
メンタル面は、トレーナーの指導は最大限尊重するとしても、自身で管理したほうが良い部分もあります。
時間制限や、状況変化の激しいレースに置いては、ジンクスや決まった儀式や手順に頼ることはもろ刃の剣となります。
頼ってしまったら「おしゃぶり」や「タバコ」や「覚せい剤」と同列に成り下がりかねません。
肝心の、試合中の心理にも影響がないと断言はできないでしょう。
また集中力を、試合前ではなく、試合中に発揮できるようにする、という視点からは、
トレーニング中や試合前は、試合中と同等あるいは試合中以下の劣悪な環境下に置くという選択肢もあるということです。
メンタルのセッティングは様々な方法があるでしょうが、高いスピードで脳の機能が半減している中、聡明な判断が求められるモータースポーツでは、無意識にバットを振るだけのような単純なスポーツを参考にするのではなく、せめてサッカーとか頭脳を必要とするスポーツから情報を入手したほうが良いでしょう。
加えて、そもそも、音楽を聴くこと自体が逃避なのでは?という視点から、自身への影響はもちろん、対ライバルにも微妙に影響があると思います。
以下試合前にヘッドフォンをして集中や、リラックスをしているライダーとその関係者、さらに観客の心の声です(妄想)。
- 「時間つぶしに最高です」(ライダー)
- 「手を振っても無視されました」(観客)
- 「こいつ(ライダー)、試合前におろおろしてまとわりついて、正直めんどくさいんだけど、音楽聞いているとおとなしくなるので助かります。」(スタッフ)
- 「音楽聞いていると、やり残した心配事を忘れられるのでうれしい」(ライダー)
- 「あいつ(ライダー)、試合前に音楽聞いて、陽気にふるまっているけど、よっぽど自身がないかチキンなんだな、ようし!」(ライバル)
- 「肝心なことを伝え損ねた」(スタッフ)
- 「目を背けるのに便利」(ライダー)
- 「あいついい年して乃木坂聴いてるよ」(ライバル)
- 「とっつきにくいイメージ」(観客)
- 「話しかけると嫌な顔しやがる」(スタッフ)
- 「試合前に、音楽聞いて閉じこもっているやつ(ライダー)って、イベント自体を楽しんでいるようには見えず、こいつのために高い金払ってると思うとちょっとキレル」(観客)
- 「とにかく本人が気持ちよくなるのは良いことだ、トレーニングメニューを積極的にこなしてくれないとね。練習の結果が試合に生かせないのはメンタルが弱いせいだし」(トレーナー)
- 「音楽聞いていると、心配性の監督の話を聞かなくて済むし、目もあわせなくて楽だ」(ライダー)
- 「Beats by Dreってアップルなんだよね~」(観客)
強じんな精神力を身に着けてることに加え、聡明な選択ができるようになりましょう。
やっぱり、試合前でもどこでも陽気に礼儀正しくファンサービスしている自信たっぷり風のマルケス、ロッシがお手本でしょうか。
では
※1
NFLがBoseと新たにスポンサー契約、Beats by Dreヘッドフォンの選手着用を制限
http://www.musicman-net.com/artist/40298.html
アメフト選手のBeats by Dreヘッドフォン着用禁止!NFLが禁止令アップルが今年5月に買収したヘッドフォンメーカーBeats Electronicsは、若者に人気の「Beats by Dre」ヘッドフォンをアスリートやセレブが身に付けてメディアに登場するマーケティング戦略で、一般消費者の印象に残る「クールさ」を演出してブランド力を高めてきました。しかしその戦略に歯止めがかかるかもしれません。アメリカのプロフットボール・リーグ「NFL」は、全てのアスリートに対して、テレビカメラの前ではBeatsヘッドフォンを外さなければならないルールを策定しました。NFLはオーディオメーカーBoseと新たにスポンサーシップ契約を結んだことによって、他社オーディオ製品を選手およびコーチ群が身に付けることができなくなります。このルールは、オフシーズンやレギュラーシーズン、プレイオフでの会場入りするシーンや、試合後のロッカールームでのインタビューや公式記者会見などに適応され、試合日の場合は試合が終わってからの90分間まで有効になります。NFLのスポークスパーソンは「NFLは長年に渡りブランドがフィールドやインタビューで非公認のブランドを露出させる行動を禁止してきました。これらのポリシーは90年代前半に始まり、現在も継続されています。そしてこれはNFLのポリシーであって、スポンサーの決定によるものではありません」とコメントしています。一方Beatsも今回の決定に対して、「過去数年に渡り、アスリートはBeats製品を試合前の儀式の一部として彼らのDNAと一体化させてきました。音楽はアスリートの集中力と心の準備にとって非常にポジティブな影響を与えてくれ、ギアと同じくらい良いパフォーマンスを残すために重要になってきています」と公式で怒りのコメントを発表しました。
アメリカでのNFLの放送は、毎試合で数百万人の視聴者を集め、広告の効果も高く見込めるテレビ・コンテンツです。
NFLにおけるBoseとBeatsのライバル関係は、他のスポーツイベントでも存在します。今夏のFIFA ワールドカップ ブラジル大会では公式スポンサーのソニーの圧力によって、FIFAは出場チーム32チームの選手に対して、メディア取材や記者会見、試合当日にはBeats by Dreヘッドフォンを着用することを禁止させました。
試合前のスタジアム入りや試合中のベンチ、試合後のロッカーでBeatsヘッドフォンを着用している選手が増えています。またBeatsは、アスリートをフィーチャーした音楽pvのように品質の高いPR動画を制作してブランド訴求を強め、それらの動画はネットで再生回数が数百万回、数千万回を超えるほど波及効果を生んでいます。このようにアスリートとヘッドフォンをマスメディアとネットで効果的に露出させることでPRとブランディングへとつなげてきました。
Beats by Dreブランドは米国で100ドル以上の価格帯の高級ヘッドフォン市場では61%のシェア大半を占めるマーケットリーダーで、これはアスリートやセレブ、DJやミュージシャンを使った効果的なPRなど、Beatsが行ってきたアグレッシブなマーケティング戦略からブランディングを高めることに成功してきました。一方Boseは22%、ソニーはわずか2%という市場シェアが調査会社のリサーチで明らかになっています。
今回の決定によって一体何が変わるのか、理解に苦しみます。アメフト選手が既存のBoseのヘッドフォンを好んで着用するとは、まったく考えられません。現在のBoseの製品ラインアップがBeatsほど一般消費者にも受け入れられるクールさがあるとは思えません。
BeatsがW杯用に制作したプロモ動画。BeatsはW杯公式スポンサーではないので、「ワールドカップ」の言葉もロゴも使えない。
これはソニーとワールドカップでも同じことで、サッカー選手がソニーのヘッドフォンをつけている姿を全くとっていいほど見かけませんでした。Beats着用禁止にしたところで、自社のマーケティングが効果を発揮できていなければ無意味ですし、何のために公式スポンサーにまでなっているのでしょうか? まさかBoseやソニーは「音質の良さ」やスペックの違いをアスリートに訴求し、音楽を体験してもらえると思っているのでしょうか?
またこれまでNFLにとってもデメリットになると思えます。Beatsのアメフト選手をフィーチャーした動画やネットで共有される写真は、公式スポンサーでもないにもかかわらず、NFL自体のブランディングに「無料」で貢献してきたからと言えるからです。
しかしこれはビジネス側の決定です。またBeatsが公式のスポンサーになることは、ほぼ100%ありえないと見ていいでしょう。この流れは、今後NBAやMLB、サッカーの欧州チャンピオンズリーグなどにも適応されると予想されます。今後の動きに注目しましょう。

















